久しぶりに『金融経済の専門家たちに聞く』を読む2009/08/18

作家の村上龍氏が主宰しているJMMというサイトがあり、そこに『金融経済の専門家たちに聞く』というコラムがある。村上龍氏の名前に釣られて、何年か前にこのJMMは読んでいた。当時は、イラクのことが気になって、ついでに米国の動向も気になっていたので、冷泉彰彦さんの『from 911/USAレポート』を読んでいた。読み進めるうちに、冷泉さんのレポートはどんどん見苦しいものになっていった。俺が読んでいたイラク人とかイラク現地取材した米英人の方たち、軍事専門家の方々からのレポートとは、まるで離れた内容になっていったのだった。そして、実際に起きたことはどうだったか。冷泉さんは、現実を覆い隠すために、妄想をレポートしているだけだった。

久しぶりに『金融経済の専門家たちに聞く』を読むのもなかなか笑える。まだ、やってるわ、という意味で。小泉竹中黄金時代は、これらの金融経済の専門家たちも言いたい放題のバラ色社会を描いた。その方々が村上龍氏の次の質問に答えている。

「村上龍からの質問
Q.1021 配信日:2009年07月27日
小泉改革に対する批判が目立ちます。改革は間違いだったと公言する政治家もいますし、改革が足りなかったという指摘もあります。今、小泉改革をどう評価すればいいのでしょうか。」
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/economy/question_answer562.html

最後に紹介するが、この質問に対して金融経済の専門家が小泉竹中の改革をどう評価しているか、読むのも面白いかもしれない。ざっと読んで、俺が興味をもったのは、彼らが小泉竹中の改革をどう評価するか、実際に数字で評価できる段階になっているのに、数字で評価をしている人が一人としていないということだ。一部を取り出した上記URLの専門家のご託宣を見ても分かるように、言っていることがまるで素人レベル。カネの流れがどうなっていて、そのカネの流れでどう現実が変わったのか、金融経済の専門家なら、そこを説明すべきなのに、誰として説明していない。例えば以前にも紹介したが、小泉政権時代に行われた次に示す巨額の為替介入をはじめとして、同じく巨額の国債発行、米国債購入は何であったのか。これが日本の金融経済社会にどのような影響をもたらしたのか。分析できるはずなのだ。彼ら「専門家」は、なぜこうした分析をし、その結果を読者に知らせようとしないのだろうか。

介入金額
平成13年度   3兆2,107億円
平成14年度   6兆4,029億円
平成15年度
4月~9月累計 12兆1,628億円
10月   1兆6,563億円
11月   1兆5,996億円
12月   2兆2,519億円
平成16年度
1月   7兆1,545億円

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(上記URLからの引用)
この質問に対する回答の一覧

寄稿家: 真壁昭夫 信州大学経済学部教授
 最近、経済状況が悪化していることもあり、小泉首相が行った改革に対する批判が高まっているようです。そうした批判を冷静に見ると、かなりの部分は、経済環境が悪化したことについて、小泉首相が行った改革を言い訳=悪者にしているように見えます。景気が悪くなって生活...

寄稿家: 菊地正俊 メリルリンチ ストラテジスト
 日本における小泉改革の評価は、近年、劇的に変化しました。現在、国会議員で小泉改革の成果を評価しているのは、中川元自民党幹事長をはじめとする改革派といわれる一部の自民党政治家と小泉チルドレンぐらいでしょう。2001年4月に小泉政権が誕生し、人気絶頂だった...

寄稿家: 中島精也 伊藤忠商事金融部門チーフエコノミスト
 小泉改革の功罪は色々あるでしょうが、総じて言えば、功が罪を上回っていると思います。2001年小泉政権が誕生した当時を振り返りますと、デフレの長期化、金融システム不安、少子高齢化時代の到来、グローバル化の進展、技術革新のうねり、など日本経済を取り巻く環境...

寄稿家: 水牛 健太郎 評論家
 いま日本は二大政党制成立への過渡期にありますが、小泉改革に対する評価の揺れの大きさは、その基盤の脆弱さを感じさせます。  小泉改革は、あの時点での政治的な可能性を、フルに近い形で実現してみせたものだったと思います。「政治は可能性の芸術」という言葉があり...

寄稿家: 杉岡秋美 生命保険会社勤務
 時代を代表する経済思想には、それなりの使命があると思われます。小泉改革がかついだ新自由主義は、失われた10年を官による停滞と総括し、経済を規制による呪縛から解放することにより民間・市場経済に再び活力を取り戻す役割を担っていました。  どちらが改革政党...

寄稿家: 三ツ谷誠 金融機関勤務
「小沢と小泉の光と影」  小泉改革についての評価ですが、例えば後世の歴史家がこの時代についてどう評価するのか、という視点で言えば、戦後の宰相で評価の対象になるのは、吉田、池田、佐藤(佐藤は外れるかも知れません)、田中、そして中曽根、小泉という顔ぶれにな ...

寄稿家: 金井伸郎 外資系投信投資顧問会社 企画・営業部門勤務
 小泉氏による構造改革の手法の特徴は、構造改革の全体像を俯瞰的に描き出して提示することよりも、象徴的な個別案件の解決によって一点突破を図ることで、改革の流れを作ろうとしたことにあるように思います。特に、そうした個別案件の中でも、郵政民営化は、小泉氏が首相...

寄稿家: 山崎 元 経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
 小泉氏は「政策」よりも「政局」の人でした。政治家的な駆け引きに於ける勘と決断力は極めて優れていたと思います。彼は、「改革」という言葉の響きとイメージを気に入っていたのでしょう。しかし、「構造改革」という言葉を体系的な定義を意識して使っていたとは思えませ...

寄稿家: 土居丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
 小泉改革は、基本的方向性として正しいのですが、小泉首相以下、細部へのこだわりが若干弱かったせいか、経済学的に見て必ずしも全てが正しいとはいえない部分があったと考えます。格差が拡大した根源的原因は、小泉改革のせいではありません。  非正規雇用化は、日本の...

寄稿家: 津田 栄 経済評論家
 小泉改革は、まず結論からいいますと、「(構造)改革なくして(景気)回復なし」というスローガンにあるように景気回復させたという点で評価できますが、「聖域なき構造改革」といいながら、手順や内容、実行において不十分であったり間違っていたりして中途半端になって...

(引用終わり)

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