鳩山氏名義の文章掲載問題 - ずさんな理屈2009/09/05

ビデオは見ていないのだが、ビデオニュース・ドットコムの神保哲生さんが、NYタイムズやクリスチャンサイエンスモニターにおける鳩山氏名義の文章掲載問題について、かなり詳しい状況説明をされている。阿修羅でも、クマのプーさんが「鳩山氏外交論文の謎 論文は本当に寄稿されていなかったのか―神保哲生(ビデオニュース・ドットコム)」という見出しで、その全内容を紹介されている。

鳩山氏外交論文の謎 - 論文は本当に寄稿されていなかったのか
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/001221.php

神保哲生さんの意見は納得する部分もあるのだが、その意見の根拠は次の部分に集約されていると思う。

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まず、最大の問題は、鳩山氏自身が「寄稿はしていない」とメディアに対して断言してしまっていることだ。VOICE編集部や鳩山氏側に勘違いはあったにせよ、実際は鳩山事務所の芳賀氏と、最初に日本語の論文を掲載したVOICEの中澤編集長とグローバル・ビューポイント代理人の大地氏の間では、鳩山氏のホームページに掲載されている英文記事を転載すること、記事を要約した上で、100社へ配信することなどは、いずれも合意事項だった。単に、鳩山事務所とVOICE編集部が、グローバル・ビューポイントの「シンジケート(記事配信業)」という業態を勘違いしていた結果に過ぎない。
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しかし、この部分を読むと、神保さんの意見はずいぶん乱暴で論理がずさんと思える。なぜなら、配信の許可と転載の許可を同一視しているからだ(転載にも今回のような見出し変更、一部転載、全文転載といろろある)。グローバル・ビューポイントでの英文記事転載は合意したとしても、グローバル・ビューポイント以外のメディアへの記事転載を合意したことにはならない。「100社へ配信することなど」と「など」が付いているが、文章を読む限り、グローバル・ビューポイントの配信先であるニューヨークタイムズなどが無条件に配信記事を編集、転載してもいいことに合意したとは受け取れない。

神保さんが書いているように、グローバル・ビューポイントは「シンジケート(記事配信業)」で、あくまでニュースの配信が仕事であり、今回のように、あたかも鳩山氏の代理人であるかのように、配信した記事をどのような形でNYタイムズなどが使用してもよいのかを決める権限を委託されたわけではないだろう。そのようなことまで委託するなら、代理人契約が必要ではないだろうか。なぜなら、どのように編集、悪用されるかわからず、代理人に権限を与えてチェックして貰う必要があるからだ。そんな契約に合意になっていないからこそ、VOICEの中澤氏は転載にあたっては、配信を受けた側がそれぞれどのような形で利用するのか確認を取りにくると考え、「確かにロサンゼルス・タイムズからは掲載許可の連絡がありました。」と述べたのではないか。これは、グローバル・ビューポイントと代理人契約をしたわけではないであろう、中澤氏としてはごく当然の反応と思える。

米国では、ニュース配信業とは、こうした代理人行為までを含むのだろうか。いずれにしても、契約書、合意書が存在するのではないだろうか。ここまで調べたのだから、神保さんには、グローバル・ビューポイント、VOICE、鳩山氏側でどこまでの契約内容になっていたのかを調べて欲しいと思う。すでに述べたような代理人行為まで含まれているのかどうか?

鳩山氏名義の文章が明らかにしてくれたこと2009/09/05

NYタイムズやクリスチャンサイエンスモニターの「Opinion」欄に掲載された文章の著作権問題について、いくつか書いたが、少なくとも俺の理解としては、掲載された文章は何ら問題はなく、むしろ、日本の次期首相となる鳩山さんとしては、きわめて当たり前で頼もしい内容という印象だ。今回の問題でむしろ興味深かったのは、いわゆる親米従属保守の従属ぶりのひどさ、時代遅れぶりがますます明らかになったことではないだろうか。例えば、米国主導の市場原理主義に対する反発は世界共通の認識であり、今回のG20でも、あのメチャクチャな金儲け至上、市場原理主義に対して取り組もうとしている。

〔情報BOX〕G20による金融規制強化策の進ちょく状況
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK846212620090903

NYタイムズに掲載された鳩山氏の意見を非難して、どこまでも米国に従えというような主張し、今回のG20で明らかになっているような世界の動きから取り残されていることを自ら証明した代表株の方の意見を振り返るのも一興かもしれない。現状のままを維持しようとする限り、アメリカは他国にパラサイトすることでしかやっていけないことを世界は認識している。タイトルは、「鳩山さん、よく考えてください」ではなく、「岡本さん、よく考えてください」の方がピッタリかも。

【人界観望楼】外交評論家・岡本行夫 鳩山さん、よく考えてください
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090901/stt0909010304005-c.htm