オバマ医療改革の逆説的見方2009/09/16

オバマさんについては救世主かのように持ち上げる見方の一方で、ヒットラー的人物という見方の両方がある。米国で始まって以来の黒人顔の大統領となれば無理もない。前者の傾向の人がオバマさんの医療改革を見ると、国民皆保険という冒険に挑んだ素晴らしい大統領ということになる。

しかし、ここでは逆を考えてみよう。公的国民皆保険となれば、一番損を被るはずの医療保険業界がこの話を持ち出したと仮定すると...

幸か不幸か、この仮定は見事に成立してしまうのだ。米国の医療保険未加入者は4,500万人を超える。これは収入からして保険に加入できない人、その逆に収入はあるものの自分の意思で入らない人の両方がいる。オバマさんの医療改革では、どちらかに関係なく、これらの人たちの保険加入が義務づけられる。確か、それも罰則付きである。公的でなければ、全員が民間保険になるから、保険業界はボロ儲け。オバマ氏自身が、議会演説でそのことに言及している。

「Now, much of the rest would be paid for with revenues from the very same drug and insurance companies that stand to benefit from tens of millions of new customers. 」
出典:REMARKS BY THE PRESIDENT TO A JOINT SESSION OF CONGRESS ON HEALTH CARE
http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Remarks-by-the-President-to-a-Joint-Session-of-Congress-on-Health-Care/

現在持ち上がっている医療改革でおかしなところは、国民皆保険か否かの二者択一で議論が展開していることだ。日本でも勘違いしている人が結構いるが、米国には公的医療保険がある。高齢者向けMedicareと低所得者層向けMedicaidだ。退役軍人局の保険もそうだ。そうであれば、二者択一になんかしないで、すでに米国民は経験しているわけだから、単純にMedicareなどの現在の公的医療保険の適用範囲を広げれば、財政面からもスムーズに事が運ぶと考えられる。例えばMedicareであれば、対象年齢を下げていけばいいだけのことだ。

にもかかわらず、オバマさんは国民皆保険を前提に話を進める。国民皆保険を前提にすれば、公的か否かの、賛成反対のどちらの側も譲れない点に話が向かっていくのは、当たり前のことではないだろうか。

郵政民営化か否かの議論にしてもそうだったが、二者択一をせまる議論というのは、非常に注意を要するのではないか。例えば高速道路無料化にしても、実際の選択肢は無料化か否かだけではない。地域で分けてもいいし、考えさえすれば、いくつも選択肢は出てくるだろう。

米連邦議会、政治はもう終わっている?2009/09/16

米国には、何があっても意見が変わらない方々がいる。それがハッキリと事実として認識できたのが、イラク戦争のとき。議会調査でイラクに大量兵器がなかったこと、アルカイーダと関係がなかったと発表されても、約3割の人は、そんな発表は関係なかった。それらの人たちは、だいたいが南西部の人たちで大多数が共和党支持者と思われる。どのような人たちか?その姿は、この間の12日のワシントンDCのデモで見てとれる。このデモの特徴はすぐに分かるだろう。ちょっと見ただけでも、黒人が一人もいないことが分かる。

http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=5306095n

まあ、分かりやすく言えば、かの有名なKKKを生み出す草の根グループと言ったらいいのだろうか。別に現実に何が起きているのかなんて関係ないから、共和党とか、金融資本とかはどうにでも利用できる。

さすがに米国議会の議員となると、それほどアホではないから、見ている限り、大多数はカネで動く。だから、どういう意見を出したら、どこから寄付が集まるということを念頭に意見を言っている。今回の医療改革も同じである。こう言えば、どっからカネが集まるか知っている。で、議員にカネを一番出したところが、自分たちに有利な法案を通すことができる。

米国の場合、これはもう仕方がない。ほんの数パーセントの金持ちとその他圧倒的大多数の米国民の所得格差が広がりすぎた。この間、この格差は、民主的な方法ではどうにもならないレベルにまで達している。つまり、ほんの数パーセントの金持ちは、マスコミを利用しながら、その他国民がいかにも政治に参加しているように装いながら、自分たちのいいように米連邦議会、政治を動かす方法を手に入れてしまったと思える。

何もしなければ、日本も米国並みになる可能性が大きい。ほんの数パーセントの連中が国政をどうにでもできるようなレベルになるまで格差を広げてはならない。