二人の米国民が見たオバマの戦争 12009/12/11

現地時間12月1日、ウェスト・ポイント陸軍士官学校でのアフガニスタン増派演説後の世論調査はなかなか興味深いものだった。朝日が伝えるCNN世論調査では、こうなっている。

米のアフガン新戦略、62%が支持 CNN世論調査
http://www.asahi.com/international/update/1205/TKY200912050388.html

しかし、この記事で何となく笑えるのは次の部分だ。

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2011年夏の米軍撤退開始への賛成も66%にのぼった。
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しかし、「11年夏に撤退が開始できるまでにアフガンの状況が良くなっている」との答えは33%にとどまり、米国民はアフガン戦争の行方を楽観はしていないことをうかがわせた。
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前に紹介したように、オバマがウェスト・ポイントでの演説で口にした撤退が現地司令官の判断に基づくという条件付きであることを前提にすれば、米国民の66%は「2011年夏の米軍撤退開始への賛成」と答える一方、かなりの割合の米国民が腹の底では「米軍の撤退はない」と思っていることになる。

大多数の米国民は、米軍の世界戦略がアフガンとイラク当初での圧倒的軍事力差を前提にした「Shock & Awe」戦略から根本的に変わったことを理解していないと思われる。米国は新しい戦略を採り入れた。2007年からイラクで実施された、カネを使ったCOIN(Counterinsurgency、対反政府勢力)戦略である。米国での報道は、自分たちの都合の良いように言い換えをするのでもっともらしく響くが、要するに、対ゲリラ戦略である。ゲリラ活動をしていたイラク人に給料を与えることで、米軍に対する攻撃を減少させた。このCOIN戦略が本当に成功したのかどうかは評価は分かれるが、米軍に対する攻撃、米兵の死傷者が大幅に減ったことは事実である。

とはいえ、Insurgency(反政府勢力)というとどことなく聞こえは悪いが、その政府勢力というのが腐敗の固まりとなれば、話は別である。アフガニスタンのカルザイ政権は、国際的にも、また米国からさえも腐敗の固まりと評価されている。となれば、ウェスト・ポイントの演説でオバマさんが、一部ネオコンのように大っぴらにカルザイ政権のてこ入れと言えないのも納得のいくところである。

では、オバマは、腐り切ったカルザイ政権をそのままにして、なぜ増派をするんだろうか...

反対の度合い、視点は違うものの、この増派に反対しているリベラルのトム・エンゲルハルトさんと保守のパット・ラングさんの二人のそれぞれの立場の意見は示唆に富んでいる。日本国民の俺から見ると、これまで世界を牛耳ってきた米国、そして欧州主要国にとっても、この優越性を維持できるかどうかが決まる最後の戦い(世界全面戦争を残して)に入っていると見える。日本がこれに巻き込まれないと思うお人好しはいないだろう。