シリーズ「刷り込み報道はなぜ可能か...1」(更新)2010/01/01

【2010年1月1日、東京発】「刷り込み報道」で近年もっとも有名なのは、やはり、911後のブッシュ政権時代におけるイラク攻撃前の報道だろう。思い出す限り、米国のほぼあらゆる主要メディアで、「911とフセインは関係している」「イラクに大量破壊兵器がある」という刷り込み報道が展開された。その後、このどちらもが嘘であることが議会報告で明らかになったわけだが、未だにどちらも嘘であったことを知らない人たちが、米国ばかりでなく世界中に数多く存在する。

嘘であったことが明らかになった後、どのメディアがどのような嘘を流したかの報道は、主要メディアでもあったが、この主要メディアの自己批判は、意図的なのかどうか重大な視点が欠落していた。それは、「刷り込み報道」は送り手ばかりでもなく、その受け手、つまり、テレビの視聴者や新聞雑誌の読者である一般国民にも問題があるのではないか、という視点が欠落していたのだ。報道があくまで送り手と受け手で成立している以上、この視点の欠落は重要な意味を持っている。そのような「刷り込み報道」を無批判に受け入れる素地が一般国民の側にあったことが問題にされず、その構造が検証されないまま放置された。

911が起きたとき米国民の多くは、このように思った。「大国として米国は世界に良いことをしているのに、米国に対してなんでこんな無慈悲で酷いことをする連中がいるのか!」そして当時、主要メディアの報道の底を流れていたものは、この種の思い一色であり、アフガニスタン爆撃も、イラク爆撃も、米国民のほぼ満場一致で簡単に肯定された。ブッシュの言う「善」と「悪」の世界二分化もこの見方に基づいている。もちろん、オバマさんもそうであることは、ノーベル平和賞受賞演説で自ら述べた。もしあの演説にオバマさんの考えがそのまま反映されているとするなら、オバマさんもまた「米国は善」という、とんでもない勘違いにどっぷりとつかっている人物ということになる。

姿こそ違え、この思いは現在のアフガニスタンでも依然として流れている。昨日のアフガニスタンのCIA基地攻撃についてパネッタ長官は「テロから米国を守る」「米国の安全を高めるために命を捧げた」と語った、とマクラッチーが伝えている。

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"Those who fell yesterday were far from home and close to the enemy, doing the hard work that must be done to protect our country from terrorism," Panetta said. "We owe them our deepest gratitude, and we pledge to them and their families that we will never cease fighting for the cause to which they dedicated their lives ? a safer America."

Taliban infiltrator who killed 7 from CIA wore Afghan uniform
http://www.mcclatchydc.com/227/story/81543.html
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タリバンによる攻撃声明では、攻撃を行ったのはアフガン軍のメンバーであり、それも最も厳重警備のCIA基地内で起きたわけだから、かなり自由に基地を出入りできる、アフガン軍でそれなりの地位のメンバーであったと考えられる。となると、攻撃を行った人物はアフガニスタンを米国という侵略者から守るために攻撃をしたかもしれない、とも考えられるわけだ(なぜなら、とことん腐敗していることが世界的に知られているカルザイ政権を守り、無人爆撃機で自国民に爆弾を落とし、ここかしこに軍事基地を作り続けているのだから)。しかし、米国民の大多数は、このような見方をすることはないだろう。というより、できないだろう。なぜなら、アフガニスタンはアルカイーダやタリバンという「悪」がいる国にしか見えないからだ。

刷り込み報道はつねに受け手の側にその報道を無批判に受け入れる素地があって成立する。これは、日本でもまったく同じである。昨年の小沢氏秘書の逮捕に関わる報道については、多くの国民が異様に感じたり、歪曲報道、虚偽報道と思ったりしている。しかし、そうした「小沢氏=悪」を刷り込む報道がなぜ可能なのか?受け入れてしまうのか?当然のことながら、刷り込み報道をする側は、911後の米国民同様、日本国民が持っている素地を想定して刷り込み報道をしているはずである。ニュースとして流すストーリーを作っているはずである。

そのような刷り込み報道を容易に受け入れる素地が自分のどこにあるのか?.....それは、これまで知らず知らずの間に溜まった頭の中のアカと言っていいかもしれない。そのアカによって最初から事実そのものが見えなくなったり、事実を事実として、また何が事実かを認識できなくなっている。

日本の主要メディアの報道と正しく向き合うためには、そしてネット世界で流行し始めているそうした報道の謎解きをするには、日本国民の側もきっちりと自己検証する必要があるのかもしれない。頭の中のアカを見つけ取り除く必要があるのかもしれない。例えば、1月1日から早速主要メディアに一斉に流れた次の報道などを参考に...

土地取引「小沢氏の指示」 石川議員、地検聴取に証言
http://www.asahi.com/national/update/0101/TKY200912310225.html
【ウッソー通信】

「今、日本のネット世界では...」(更新)
http://ootw-corner.asablo.jp/blog/2009/12/24/4774956
続報:「今、日本のネット世界では...」
http://ootw-corner.asablo.jp/blog/2009/12/25/4775730

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_ マスコミに載らない海外記事 - 2010/01/01 20:18

Grant Lawrence 2009年12月27日 小生、至る所に陰謀があると考えるほうではないが、良くできた好都合論は大好きだ。デトロイトで、着陸の際に、航