逮捕/起訴の合理的な理由ってある? 22010/01/28

人間というのは不思議なもので、一般社会ではやってはならないと思われていること、信じられないと思われていることでも、小さな世界で慣習化、常態化し、疑問も持たれない状態でいると、ごく当たり前のように一般社会の目の前に出てくることがある。朝日の次の記事はその典型と言ってもいいだろう。

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小沢氏「資金足りているか」 質問受けたと石川議員供述

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、元秘書の衆院議員・石川知裕(ともひろ)容疑者(36)が東京地検特捜部の調べに対し、政治資金収支報告書の提出前に、小沢氏に陸山会の総収入や総支出を説明し、「資金は足りているか」などと聞かれたと供述していたことがわかった。だが、虚偽記載の事実は小沢氏に話していないという。

 特捜部は、小沢氏に虚偽記載の認識があったかどうかを主要な解明ポイントの一つにしているとみられ、2月4日の勾留(こうりゅう)期限まで、石川議員の調べを進める。

 この事件で特捜部は、石川議員のほか、会計責任者だった公設第1秘書・大久保隆規(たかのり)容疑者(48)、石川議員の後任の事務担当者だった元秘書・池田光智容疑者(32)を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕。3人は、2004年に陸山会が東京都内の宅地を約3億5千万円で購入した際の原資4億円や、07年に小沢氏に拠出した4億円などを収支報告書に記載しなかった疑いが持たれている。

 複数の関係者によると、石川議員は、事務担当者だった04年の収支報告書について、小沢氏に金額の概要を説明した後、こういう内容で提出しますと話し、小沢氏は「そうか、分かった」「資金は足りているか」などと答えた、と供述しているという。

 特捜部は、これらの供述内容について、一般的な報告の域を出ていないと評価している模様だ。同法違反容疑が持たれている4億円の収入の不記載といった内容まで小沢氏に伝えた事実があるかどうかを、引き続き調べているものとみられる。小沢氏は23日の説明で、不記載について「全く把握していなかった」としている。

 池田元秘書も同様に、関連政治団体ごとの全体的な収支については、小沢氏に報告したと供述しているという。

 また、虚偽記載の容疑を認めているとされる石川議員と池田元秘書は、「大久保秘書にも報告した」と供述。だが、大久保秘書は「事務担当の2人に任せきりで、報告すら来ていない。会計責任者としての報告書の署名も代筆だ」とし、小沢氏の関与については「おやじなんて、何も関係ない」と関係者に話しているという。

 一方、特捜部は、土地代金の原資4億円にはゼネコン側からの裏金が含まれている疑いがあるとみており、石川議員らを調べている。裏金の受領については、石川議員らは完全否定している。

http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY201001270468.html
http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY201001270468_01.html
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地検特捜部は、たかだか「2004年に陸山会が東京都内の宅地を約3億5千万円で購入した際の原資4億円や、07年に小沢氏に拠出した4億円などを収支報告書に記載しなかった疑い」のために現職国会議員を含む3人を逮捕した。「記載をしなかった」のであれば、単純に、どういう記載が適切であるのか、地検特捜部は、逮捕した3人、また国民に向けて説明すべきではないだろうか。なぜ、適切な記載を説明しないんだろうか。具体的に説明したら、なんだそんな程度のことで逮捕したのか、ということになるのではないだろうか。

記事の最後の「特捜部は、土地代金の原資4億円にはゼネコン側からの裏金が含まれている疑いがあるとみており、石川議員らを調べている。」というのも別件逮捕のことであり、一般社会から見ると極めて危険である。昨日紹介した郷原の指摘によれば、そもそも、こんなもの疑義事実に含まれていない。それが記事では、恐らく何の疑問もなく、当たり前のことのように書かれている。

とはいえ、上記の朝日の記事は石川さんなどの取り調べの状況、またいかに地検とマスコミ(少なくとも朝日)の関係がごくごく小さな世界であることを伺わせている点で、なかなか出色ではないだろうか。