GM破産措置から見える構図 12009/06/11

オバマさんはGMを破産、国有化して、自動車産業の再生をぶち上げていた。そして海外では米国の保護主義に対する懸念が広まっていると報道されている。

M破綻:/2 「国有化」大統領の賭け ◇経営介入、保護主義…広がる懸念
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090604ddm002020061000c.html

しかし、こうした報道を真に受けていいのだろうか?そもそも米国はこの数十年一貫して製造業をアウトソーシングしてきたのではないか。その流れからいえば、オバマさんの言う米国自動車産業の再生なんて発言は眉唾ものじゃないだろうか。単純に国内向けのリップサービス。

もっと根本的なところで、例えば中国とアメリカの労働コストの差は依然としてデカイ。自動車技術面からもすでに日本やドイツにひどい遅れをとっているのに、労働コストが高い国内でなぜ自動車産業を再生する必要があるのか。コストが高すぎて勝負にならないだろう。これまでの流れを見れば、当然、自動車という製造業もまたアウトソーシングと考えるのが常識的な線ではないだろうか。

もう一つ昨年末ブッシュ政権の末期に金融機関へのほぼ無条件の税金投入が決められ、それがオバマ政権下でも続いているのに対し、自動車産業へはさまざまな条件が付けられ、さらには自家用機で公聴会にやってきたと自動車業界幹部がメディアで見せ物にされるという扱いの違いを思い出すといいのでないか。こうした米国内の一貫した流れを思い出すと、「GM破産を米国における産業資本に対する金融資本の完全勝利の瞬間」と捉える次の記事の見方はなかなか的を射ていると思える。

R.I.P. Industrial USA. The Banksters Win, Even When They Fail
(米国製造業よ安らかに眠れ。自分たちが破綻しても勝利した銀行ギャングたち)
http://www.blackagendareport.com/?q=print/content/rip-industrial-usa-banksters-win-even-when-they-fail
(英文のままで申し訳ないが、言っていることは見出しに要約できる)

問題は、ブッシュ、オバマさんと続くこの流れに日本がどう巻き込まれてきたか、巻き込まれているかにある。その意味では、売国的行為とかなりの人が感じているであろう日本郵政民営化・分社化に、金融界ではなく産業界の雄、奥田碩さん(トヨタ自動車株式会社取締役相談役)や牛尾治郎(ウシオ電機株式会社代表取締役会長)さんの名前が中心人物として登場するのは意味深である。

コメント

_ abetchy ― 2009/06/17 23:15

こんばんは。先日はコメントをありがとうございました。

米国の自動車産業ですが、オバマ政権としては、国際的な競争力のない今のデトロイト(米国自動車産業)はいったん潰して(国有化を含めて)、次世代の電気自動車で勝負をかける気なのかなー???なんてことが気になっています。

電気自動車については、中国の新興メーカーにも技術力があるという話もありますし、日本メーカーも負けて欲しくないです。(そんな心配は杞憂だということだと良いのですけど。)

_ masa ― 2009/06/18 08:15

betchyさん、お早うございます。コメント有り難うございます。

> オバマ政権としては、国際的な競争力のない今のデトロイト(米国自動車産業)はいったん潰して(国有化を含めて)、次世代の電気自動車で勝負をかける気なのかなー???

他でも書きましたが、アメリカでの産業の歴史を見ると、これはあり得ないですね。賃金という点から見ても、アメリカは黒人の後は、ほとんど無制限の移民の受け入れ。つまり、これは賃金を安く抑えるということで、それでも自動車競争に勝てなかった。やっぱり、offshoringだと思います。

> 電気自動車については、中国の新興メーカーにも技術力があるという話もありますし、日本メーカーも負けて欲しくないです。

いろいろなことを追っていくうちに、最近私は、こういう発想もできなくなりました。そもそも日本には自動車メーカーが多すぎる。豊かな自然がありながら、それを利用できず、日本をいびつにしている原因の一つと考え始めています。だから、日本郵政の役員に名を連ねている奥田さんを未だ抱えているトヨタなどは、さっさと日本から出て行くか、潰すかすべきだと考えています。アメリカに本社を移して、アメリカのために働けばいいんじゃないでしょうか。

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