*金融資本は何を...? 量的緩和の嘘2009/06/22

昨日か一昨日か紹介したニッセイアセットマネージメントの「日米英の量的緩和について」を読むと、矛盾することが書かれていて、面白いかもしれない。

http://www.nam.co.jp/market/market/09/marketnow04.html

例えば、2001年以降の日銀による量的緩和について、マスコミでは、銀行による貸し渋りや貸し剥がしなどを抑えるためと報道されていたのを覚えているだろうか。実際、ニッセイも上記ページで量的緩和の効果として次のように書いている。

「増加した法定準備預金残高を商業銀行は貸出し等に充てることが可能になり、信用収縮の改善要因になります。」

すなわち、日銀の量的緩和(つまり、マネタリーベースの拡大)によって、商業銀行は市場に貸し出す余裕ができ、「信用収縮」、つまり貸し渋りや貸し剥がしが改善される(つまり、マネーサプライ拡大)と書いているわけだ。しかし、後ろの方を読むと、現実の動きは、この説明とはまるで異なることが明らかになる。例えば日本銀行であれば、

「2001年以降の日本の量的緩和を見ると、お金の総量(マネタリーベース)は急激に上昇したにも関わらず、銀行貸出しは減少しました。つまり、結果だけを見ると、当時、銀行は、お金を貸出しに回さなかったようです。 」

「結果だけを見ると」も何も、昨年末からの米国FRBから金融機関への税金投入に伴う量的緩和でも、日本銀行と同じ結果が出ている。

「日本の例と同じく、銀行は急増した法定準備預金を貸出しへ回すことには消極的な模様です。 」

この記述のすぐ下にある「(グラフ4)米国商業銀行 資産の推移(銀行信用と現金)」というグラフを見ると、この「消極的」というのはきわめて不適切な表現と思える。グラフは、マネタリーベースが急増する一方で、銀行信用が激減していることを示している。


いずれにしても、量的緩和は「信用収縮の改善要因」(あくまで「要因」)と言えるだけ。そもそもの目的が、政府や中央銀行が主張する、またマスコミが宣伝する信用収縮対策ではない。少なくとも米国の場合、現実には、金融機関が持っている不良資産を買い取ってあげただけなのだ。ただ、それを正直に言ったら、国民が税金投入を納得しないから、「信用収縮対策」というのを言い訳にした。税金投入を前にした昨年9月、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーが投資銀行から商業銀行に転換した理由もここにあるだろう。投資銀行はFRBの管轄外であるから、商業銀行に転換しておかなければ、「信用収縮対策」という名目で税金という恩恵を受けられない。ブッシュやポールソンはまんまと国民を騙した、ってことになる。そして、この枠組みはオバマ大統領になっても受け継がれ、金融規制と称してFRBの権限強化の方向に向かっている。

金融資本は何を...? 金融レポートを読む2009/06/22

「金融機関としては」という但し書きはつくものの、ニッセイアセットマネージメントの「日米英の量的緩和について」というレポートは簡潔で、よくまとまっているのではないだろうか。

日米英の量的緩和について~今更聞けない量的緩和とは?~
http://www.nam.co.jp/market/market/09/marketnow04.html

レポートを作成した方の苦労が伺える。マスコミで報道されていた内容と量的緩和の現実がまるで違うことを事前に知っていたか、あるいは自分で日銀やFRBなどのデータを見ていく過程で知ることになったのか、なかなか興味深い。レポート作成者は最後にこうまとめている。

「前述したように、量的緩和それ自体が経済の回復に効果を発揮するわけではありません。ただ、過去の日本の例を見る限り、量的緩和は約2年の時間差を伴い日本の景気回復に重要な役割を担っていたようです。」

このレポートに関していえば、「量的緩和それ自体が経済の回復に効果を発揮するわけではありません」というのが救いだろうか。立場上仕方がないのだろうが、金融機関のレポートを読むと、まるで金融経済が主で実体経済が従の印象を受ける。あるいは、そうした印象を与えるように書かれている。この考え方の最終的に行き着く先が、今回のサブプライム問題に端を発する米国の金融詐欺なのだろう。利益を出すために、実体経済をいじり回す。後は野となれ山となれ。まさに強欲、GREEDYそのものである。そして、そのもたらす現実が目の前にある。

とはいえ、さまざまな報道を読む限り、米国金融資本の担い手たちが反省するなんてことはありえないだろう。彼らは米国経済をも破壊し、一般米国民を奴隷にする。幼稚と思われるだろうが、強欲な彼らに最も近い立場にある日本の金融機関の方々には、自分たちそして家族が暮らす日本を守るすべを考え、知恵を出して欲しいと思う。製造業をはじめとして、自分たちだけが助かる確率なんてきわめて低いのだから。今は対テロ戦争とやら以来、Brown Arabが敵になっているが、JAPはJAP、Yellow Japは生きている。これは、流れている血が表向き見えていないだけの戦争と言えるのではないか。