「普天間基地移転問題」あれこれ(1) (更新)2009/12/29

【2009年12月29日、東京発】沖縄の普天間基地移転問題は、鳩山新政権にさまざまな影を落としている。国外から日本で繰り広げられている議論を見ると、実に滑稽な様相を呈しているように見えるかもしれない。長年にわたって政権の座についてきた自民、また日本の主要マスコミからは、鳩山政権の「見直し」についてずっと「米国を怒らせる」などの反発が起きていた。ただ「米国を怒らせる」であり、米国の誰を怒らせるのかの話には発展しない。ただ、「米国を怒らせる」のである。

この問題を追っていくと、日本の主要マスコミをはじめとする、見直し反対派の間で奇妙な言い替えが起きていることが分かる。現時点では、普天間基地移転は、あくまで「合意された移転計画」、つまり、「合意された移転案」であるのに、どういうわけか「合意」だけになっている。英語で表現すると「agreed relocation plan」と「relocation agreement」であり、両者の意味はまるで違う。米国が公式にはどう表現しているかというと、少し前に騒がれたクリントン国務長官による「藤崎駐米大使呼び出し」問題でクローリー国務省次官補がハッキリと米国側の認識を明らかにしており、米国務省の文書に残っている。

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The Secretary and Japan's PM met briefly in Copenhagen; the U.S. feels that the current "plan" for the realignment is the best way to go forward; we are continuing to work with the Government of Japan and the Realignment Roadmap High-Level Working Group

We continue to believe that the current "plan" provides the best way forward, but we'll continue our discussions with Japan on this issue.

Philip J. Crowley, Assistant Secretary
Daily Press Briefing Washington, DCDecember 22, 2009
http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2009/dec/133952.htm
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""で括ったとおり、合意はしたものの、あくまで「plan」に合意したのであり、それを実際に契約(agree)して、実施(implement)するかどうかはそれぞれ別次元の問題である。計画に合意しても、細部になったときに契約しないことだってありうるし、実施するのであれば、具体的にどのような工程で実施するのかなど、細部にわたる突き合わせが必要になる。

米国側の公式な認識、見解はあくまで「計画」「案」であるのだから、米国側としては何を大騒ぎしているのか、よく理解できないのではないだろうか(そもそも、イラクやアフガニスタン、経済問題で手一杯だし、こんな細かいことに煩わせられたくないというのが実情だろう)。日本の主要マスコミが伝える「米国を怒らせる」とか石破元防衛庁大臣の「背信行為」発言などというのは、そのままオバマさん伝えても、何が言いたいのか分からないに違いない(というより、日本のやっていることが異様に感じるかもしれない)。なぜなら、合意したとしても、計画変更はいつでもあることであり、だからこそ、オバマさんはごく当たり前のこととして計画変更を了承した。クローリーさんは「政府は現在の計画が最善と考えている」と言ったのだ。【ウッソー通信】

「普天間基地移転問題」あれこれ(2)2009/12/29

【2009年12月29日、東京発】普天間基地移設問題に関わる日本国内の議論で何より異様に思うのは、日本が自国の国防をどうしたいのか、アジア地域の安定をどう考えているのか、まるで分からないことではないだろうか。これは見直し賛成派、反対派のどちらも共通している。もちろん、鳩山政権もこれに含まれる。

日本は第二次大戦の時の過去もあり、中国や朝鮮、また共産主義国旧ソ連を敵国として想定していた。だからこそ、平和憲法の下、自衛隊があるとはいえ、米軍の駐留が必要と説明されてきた。しかし、そんな時代はとうの昔に終わっている。今や、日本の最大貿易相手国は数年前から中国であり、これからの日本は中国なしには考えられないだろう。では、北朝鮮?

日本の鳥取県程度の国力しかない北朝鮮を真面目な顔をして取り上げたら、笑われるかもしれない。おまけに、エネルギーを中国に頼っている北朝鮮が、中国を無視して、あるいは意に反して何かをすると考えるのは、常識外れというものだろう。表向きはいろいろなことが報道されるかもしれないが、北朝鮮の生命維持装置は中国がしっかりと握っていると考えるのが常識的な線である。

では、日本は国防として何をしたいんだろうか。どこを敵国として想定しているのだろうか。想定する敵国によって、また何をしたいかによって、米軍の必要性、必要となる規模、装備は違ってくる。あるいは、現在の自衛隊だけで、まったく米軍を必要としないかもしれない。これも何をしたいかによって変わってくるが、何か目的、目標があるとして、最低限の国防の上で、どの程度の兵力、軍備が必要か、自衛隊幹部と議論した様子もない。

日本は実に不思議な国だと思う。自国を守る上で最低限何が必要かの議論もなしに、ただ米軍基地移転が話題として沸騰している。イラク、そしてアフガニスタンの米軍の駐留理由の一つが「自国を守れる軍を育てる」というのは、日本にとって何とも皮肉な話かもしれない。米国から見ると、戦後50年になっても、米軍が育てた自衛隊というのは「自国を守れる軍」ではないということなのだろう。【ウッソー通信】