*犯罪者を増やす?政治資金規正法の適用2009/06/06

東京地検特捜部の政治資金規正法の「虚偽記載」の適用基準を考えると、考えれば考えるほど疑問に思うことが多い。小沢さんの大久保秘書は起訴、二階さんのところは不起訴。すでに多くの方が指摘しているが、現実問題として両者の間で何が違うんだろうか?そもそも地検がいっている「認識の有無」は、起訴、不起訴の分かれ目として説得力、正当性があるんだろうか?

もっと重大な問題として「認識の有無」を基準にした場合、例えば西松建設のダミー団体と検察が主張する2つの団体に寄付を行った西松の社員は、犯罪に荷担することを承知の上で寄付を行ったことになるのではないだろうか。こうした問題は、寄付をした西松の社員ばかりではない。西松と2つの政治団体と政治家の三者の間に入った個人・団体も犯罪に荷担したことになるのではないか。例えば、一般に、生身の人間が直接現金を抱えてこの三者の間を行き来したことはありえないだろうから、間に入った金融機関も犯罪に荷担したことになるのではないか。口座をその時々で変えたのでない限り、西松の2つの団体のカネの出入りを金融機関は把握していたはずで、大久保秘書が有罪になった場合、金融機関は犯罪に荷担しないように政治団体のカネの出入りをしっかりと把握し、検察のいうダミー団体の疑いが濃くなればすぐに当局に通報する責任があるだろう。もっと広げて、総務省はどうなるんだろうか。地検がダミーとして摘発した西松の2つの政治団体を認可したのは総務省で、政治資金収支報告を受けているのも総務省である。認可を出し、収支報告を受けている総務省には、それを調べる責任もないんだろうか。

つまり、地検が主張するように、西松の2つの政治団体をダミーと認識しうる立場にいた人は、西松の社員をはじめとして、かなりの数存在していたと思える。にもかかわらず、認識があったとして大久保さんだけを逮捕、拘留、起訴するのは、「国策捜査」とかは別に、著しく公正さを欠くと思える。また、大久保さんが政治資金規正法違反の「虚偽記載」で有罪となったとなると、「認識の有無」に基づく今回のような規正法の適用の仕方は犯罪者、少なくとも犯罪に荷担する人を増やすだけのように思える。

犯罪者を増やす?政治資金規正法の適用(補足)2009/06/06

犯罪者、少なくとも犯罪に荷担する人を増やすだけのような、大久保さんに対する東京地検の今回の政治資金規正法の「虚偽記載」違反の起訴基準。例えば、西松建設が発表した報告書の中に次のように供述したと紹介されている人は、自分の寄付先が西松の作った政治団体であることを明確に「認識」していたのではないか。そうでなければ、こんな供述はあり得ないだろう。

「平成7 年夏ころ、政治団体「新政治問題研究会」が設立されることとなった。献金を行う趣旨に関しては、工事の発注を得たいという積極的な動機よりも、受注活動を妨害しないでほしいという消極的な理由もあったと供述する者もいた。」(西松建設の報告書22ページ)
http://www.nishimatsu.co.jp/press/2009/20090515_2.pdf

だとすると、この供述をした西松の社員は、起訴された国澤さんと100%同じ罰条で逮捕、起訴されていいのではないだろうか。なぜなら、同報告書には次のように書かれているのだから。

「その後、上記の行為は、本来ならば当社の名義での献金をなすべきところ、政治団体という「他人名義」で献金したという評価も重なるものであるとして、「何人も、本人の名義以外の名義または匿名で、政治活動に関する寄附をしてはならない。」という罰条(同法第22 条の6、同第26 条の2 第4 号)も重ねて適用され、國澤及び大久保氏が公判請求されることとなった。」(報告書21ページ)

上記供述した西松社員と、他人名義で寄付したとされ起訴された国澤元社長とどこが違うんでしょうか。どこをどう読んでも、社員は「新政治問題研究会」が西松の政治団体であることを認識していて、そこに寄付したんじゃないでしょうか?供述した社員が独立した個人としてやったことは、現実の法律レベルでは、国澤さんと100%同じじゃないでしょうか?「政治団体という他人名義で献金した」ってことじゃないでしょうか?