金融資本は何を...? エージェント学2009/06/24

「帝王学」というのはよく目にする言葉だ。実際には教育、訓練に過ぎないにもかかわらず、「学」としたことに、この言葉の発案者が持たせようとした意味が伺える。英語には、「帝王学」に直接対応する言葉は見つからないようだ。恐らくgroomとかeducateを使って表現することになる。

「帝王学」という言葉があるなら「エージェント学」というのもあっていいだろう。選んだ人間をエージェントとして活動させるための教育、訓練。お馴染みのところでは、かの有名なジェームズ・ボンドもこれに当たる。誰か使っている人がいないかネットを検索したが、ヒットしない。

「エージェント学」の観点からは、ジョン・パーキンス(John Perkins)さんの『Confessions of an Economic Hitman(エコノミック・ヒットマンの告白)』は衝撃的だった。イラクのことを追っている過程で、Democracy Now!に彼が登場し、仕事を忘れてインタビューを見、掲載された書き起こしを読んだのを覚えている。

パーキンスさんが初めてDemocracy Now!に登場したのは2004年11月09日。そのときは短いインタビューで、恐らくDemocracy Now!側では言っていることが本当なのか、背後関係などを確認したのだろう。そのすぐ後、2004年12月31日にまるまる1時間を彼とのインタビューに当てた。司会者を務めたエイミー・グッドマンさんなどのいわゆる米国リベラル(?)の方々にとっても、元エージェントとしてのパーキンスさんの告白がいかに衝撃的で詳しく取り上げる価値があると思ったのかが伺える。

Friday, December 31, 2004
Confessions of an Economic Hit Man: How the U.S. Uses Globalization to Cheat Poor Countries Out of Trillions
http://www.democracynow.org/shows/2004/12/31

その後、パーキンスさんは瞬く間に有名になり、本は米国でベストセラー、Democracy Now!も日本語化されて、ずっと後だがインタビューが紹介されることになった。

2007.06.05
エコノミック・ヒットマンが語るアメリカ帝国の秘史  ―経済刺客、暗殺者、グローバルな腐敗の真相
http://democracynow.jp/submov/20070605-1

元のDemocracy Now!でもそうだし、日本でもそうなのだが、俺にはパーキンスさんのこうした取り上げ方がどうもしっくりこない。この人たちはパーキンスさんの告白『Confessions of an Economic Hitman』を例えば「エコノミック・ヒットマンが語るアメリカ帝国の秘史  ―経済刺客、暗殺者、グローバルな腐敗の真相」というように取り上げる。日本語の書名も『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』である。このような取り上げ方をすると、資本家による搾取とかのいわゆる左翼的な図式に押し込められて、元エージェントとしてのパーキンスさんの告白が見えなくなってしまう。エコノミック・ヒットマンというエージェントになるための特別な教育、訓練を受けた人物からの告白とパーキンスさんの告白を捉えることによって、その他のエージェント、例えば日本にいるエージェントと考えられる、どなたかの背景に焦点を当て、具体的に見ていけるようになる。

ってなわけで、「金融資本は何を...? 」の次回は、エコノミック・ヒットマンというエージェントであったパーキンスさんの告白を参考にしながら、「エージェント学」から見たオバマ政権のある注目すべき人物に焦点を当ててみよう。

*イラン、中東を読む2009/06/24

イランのデモに関して日本で流れているニュースを見ると、見出しを読むだけで大笑いする。

オバマ米大統領、イランの改革派デモ弾圧を強く非難
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090624-OYT1T00414.htm?from=navr

言い訳はあるにしても、自国から遠く離れた場所に無人機から爆弾を落とす命令を出している国の大統領が「デモ弾圧を強く非難」とは、これほど滑稽なこともないだろう。おまけにイラク、アフガンでは、頼まれもしないのに、自分たちの都合で米軍基地を建設している。

イランにももちろん、米国とつながっているエージェントはいるだろう。日本では報道されていないが、イラン国内のエージェントによる工作、破壊活動はずっと続いている。しかし、基本的にイランの圧倒的大多数の人たちは西側、特に米英の助けを受けて、現在の体制をどうにかしたいなどとは考えていないと思われる。なぜなら、イランの人たちの米英に対する嫌悪と不信は根深いからだ。これは中東イスラム諸国で共通する現象でもある。どの国でも反米英意識は根強く、親米諸国といっても独裁国のほぼ支配層だけが親米なだけである。イラクでは、内戦状態になってさえ、米軍撤退を求める声がずっと衰えず、世論調査をやれば必ず過半数を大きく超えていた。

イランでデモが荒れた最大の原因は、あくまで国内での経済などの問題に対する不満と考えていいだろう。一般に、昨年だったか一昨年だったか、フランスでもそうだったように、どこの国でも荒れるほど取り締まりは激しくなる。米国でも同じだ。もっと悪いことに、特に英米の場合、デモ隊に紛れて暴動を仕掛けたりするのがいる。いずれにしても、日本のようにこれだけ政治、経済がメチャクチャでも大規模なデモさえ無い方が異常と思える。

ちなみにイランの方のデモは、当面とは書いてあるが、すでに消えようとしているようだ。

Opposition looks like it's petering out - for now
http://www.theglobeandmail.com/news/world/opposition-looks-like-its-petering-out-for-now/article1194417/