*日本に巣くう連座制シンドローム2009/06/18

そう覗いているわけではないが、今や政治関係の掲示板は、少し前の西松献金問題に続いて郵便不正問題で喧しい議論が交わされていることだろう。マスコミが大きく報道するから無理もないのだろうが、議論内容を見ると、俺にはこれが根本的な部分で日本国民の一種の病気のように見える。個人と組織の区別が曖昧な、きわめて不健全な連座制シンドロームという病的傾向である。「国策捜査」と問題にする方も、そうでないと主張する方もどちらも同じ。いわゆる「国策捜査」とやらを検察がもしやらかしていたなら、恐らくは検事もこの病的傾向の持ち主である。

一歩退いて見れば、現在繰り広げられている議論の馬鹿らしさがよく分かる。例えば少し前に痴漢をやったとかで検事が逮捕されたことがある。一般に、その検事が痴漢容疑で逮捕されたからといって、検察にいる人間はみんな痴漢と考えるだろうか。それは例えば東京地検で何人も立て続けに痴漢で逮捕されれば、ひょっとして東京地検は痴漢奨励でもやってんじゃないかと心配し、地検という組織そのもを問題にするだろう。しかし、わずかぽっと出た一人。毎日仕事をしながら安穏と過ごせるわけがないから、そういう人間が出てきても、何ら不思議はない。むしろ、ある程度の規模の組織で、訳の分からないことをやらかす人間が一人もいない方が不思議である。どんな組織であれ、その組織を構成する人間を朝から晩まで監視するわけにはいかない。100人いれば、おかしなのが、あるいは不正に鈍感なのが一人や二人出てきて当たり前じゃないだろうか。

今回の郵便不正事件もこれと同じである。巷間伝えられているように民主党の議員が関わっていたとして何だと言うんだろうか。不正に関わっていたことが事実として判明したなら、民主党は組織として相応の処分すればいいだけのことだ。民主党という組織がやるべきことはそういうことだろう。

俺らは組織の不正と個人の不正をきっちりと分けて考えるべきじゃないだろうか。組織の不正が問題になるのは、組織的にあるいは会社のトップが不正に関与していたかどうかという点にある。例えば西川社長一人が問題のようにされているが、現在の日本郵政が問題なのは、日本郵政の一般社員の知らないところで、役員となっているトップ連中がグルになって不正行為、売国行為をやっていた疑いがあることだ。この疑いは、鳩山邦夫元総務相名で出された「日本郵政株式会社法第14条第2項に基づく監督上の命令等について」で指摘されているように、自分たちがやったことを「記録しない、報告しない」という一点をとっても、十分な根拠をもつ。客観的な記録を残し、報告すべきであるにもかかわらず、そうしていないのだ。

繰り返そう。組織の不正と個人の不正はまったく次元の異なることだ。組織がその構成員一人一人を朝から晩まで監視管理することなどできないし、それ以前にそんな監視管理はやるべきことでもない。根拠もなく個人の不正を組織の不正のように見なし、同一視する傾向は、日本に巣くう病気といっていいものだろう。この病気は日本の至る所に蔓延し、あまりにも日常的、当たり前に存在するために、その存在さえ意識されていないように見える。

追記:

記事を書き終えてから、名城大学コンプライアンス研究センターの「第63回定例記者レク概要」という郷原信郎さんの講義録(?)を読んだ。その中で郷原さんは、小沢さんに対する西松建設の献金問題について民主党の方々もまた、俺が思う「組織の不正と個人の不正の区分け」ができていなかったことを指摘していた。同感である。

以下、引用>
「なにより重要なことは、危機管理の観点から考えると、今回のこの民主党の対応、小沢氏の対応には重大な問題があった。その重大な問題というのは、まず、この問題が小沢氏の資金管理団体の政治資金の処理の問題にあるにもかかわらず、最初からそれを民主党の代表、民主党の問題のようにして対応した。ということで、小沢氏という政治家個人と民主党とが渾然一体となってしまったために、事態を客観化できなかった。」
ソース: http://www.cc.toin.ac.jp/crc/news/090611reku.pdf
第63回定例記者レク概要 by 名城大学コンプライアンス研究センター 郷原信郎


* これは、以前に出した「病的、滑稽な潔癖、道徳主義」を加筆修正したものです。

なぜ、あのハゲタカ銀行が...?2009/06/18

とてつもない額の不良債権を抱えていたはずのあのハゲタカ銀行群だけが、なぜこんなにも早くに復活しちゃうの?次のブルームバーグの記事はそれなりに嫌味も入れているのですが、ガス抜き程度。ハゲタカ銀行復活のカラクリを種明かししてくれたら、もっと素晴らしい記事になっていたかもしれません。それより、この記事、本日付けなんですけど、「日本政府の景気底打ち宣言」と連動していると思いませんか?何か変なんですよね。今回の不況はそんな簡単に底打ちするわけないと思うんだけど。イスラエルがよく使うあの手じゃないか?なんて疑っちゃいますね。

以下、引用>
米ウォール街 夢の宴再始動
http://www.business-i.jp/print/article/200906180029a.nwc
(右横写真のキャプション)
「米議会の公聴会でつるし上げられる(左から)ゴールドマン・サックスのブランクフェインCEO、JPモルガン・チェースのダイモンCEO、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのケリーCEO。公的資金返済で再びわが世の春がやって来る=2月、ワシントン(ブル-ムバーグ)」

 アルコール類は鍵のかかる戸棚にしまおう。財布は見つからないところに隠そう。大き過ぎてつぶせない、米国最強の銀行が公的資金を返済しようとしている。つまり、ウォール街の宴が再び始まるということだ。

 ◆解放された銀行

 米金融機関10社は先週、約680億ドル(約6兆5000億円)の株を政府から買い戻す許可を得た。「ありがたや」と銀行は叫んだ。政府に昨年救済されて以来8カ月、銀行は税金が銀行員のボーナスと物見遊山の出張に使われているという大衆ヒステリーと人気取り政治家の圧力という二重苦に悩まされてきた。

 しかし今や、銀行は全米に向かって「余計なお世話」と言えるのだ。フランク下院銀行委員長(民主、マサチューセッツ州)も、どうすることもできない。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースの金持ちバンカーとトレーダーはやっと「国家が私たちのために何をしてくれるか」を尋ねるのをやめ、「会社の金で私が私に何をしてやれるか」を夢見ることが再び可能になった。

 自転車出勤にはさようならだ。ハンプトンズの高級住宅からヘリコプターでご出勤という生活に戻ろう。機会は無限だ。今や自由になれたのだから。

 政府救済のくびきを逃れた彼らが、自責の念などとは無縁の厚かましい精神構造を取り戻し、人類全体にとっては無価値なサービスの提供の対価として数百万ドルを支払われることでしか味わえない独特の高揚感を再発見するための10段階のプログラムを紹介しよう。

 ■ステップ1 ボーナスを復活させる。まず経営トップから始める。つまり、ロイド・ブランクフェイン、ジョン・マック、ジェイミー・ダイモンの3氏だ。米国は「アメリカンドリーム」の国に戻った。必要なのは「夢」だ。どんなに確率が低くても、破産した自動車メーカーの従業員の息子が成長していつの日か、父親がかつて勤めていた会社に次の破産申請のための助言を提供して数百万ドルを稼ぐという夢。優秀な人材をつなぎ留めなければ、皆がAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)になってしまうことを忘れてはならない。

 ■ステップ2 ボーナスを増額する。これは可能だ。ガイトナー財務長官が銀行員の報酬について何か新規の「ベストプラクティス(最良の慣行)」を導入することなど心配しなくていい。ロビイストが何とかしてくれる。

 ■ステップ3 経費をめぐる会社規則を緩める。マンハッタンで最高のアダルトエンターテインメント施設だという評判の「スコアーズ」は2年の空白を経て再開している。

 ■ステップ4 オフィスの内装をやり直す。急がないとメリルリンチのCEO(最高経営責任者)だったジョン・セイン氏が次の会社に雇われて、いいインテリアデザイナーを独占してしまう。うまくいけば3万5000ドルのトイレの掘り出し物が見つかるかもしれない。

 ■ステップ5 シティグループが1月にキャンセルした5000万ドル分の社用ジェット機を買い取る。買い取ったうち少なくとも半数の機は幹部と取締役の私用に割り当てる。ダウ工業株30種平均は3月の底から2000ドル以上も上昇した。自己満足に浸ってもいい。

 ◆物見遊山の勧め

 ■ステップ6 もっともっと物見遊山を。出張について広報会社にお伺いを立てなくてもよくなったので、またラスベガスにも行ける。「ウィン・ラスベガス」ホテルのタワー・スイートの宿泊料は1晩たったの1000ドルだ。大切なお客のためはティファニーのギフトとメルセデスの送り迎えの手配も忘れずに。

 ■ステップ7 ケネス・ファインバーグ氏の法律事務所を起用する。米政権は同氏を金融安定化資金を受け取った銀行の報酬の監督係に選んだが、同氏の事務所のウェブサイトを見たところ、顧客にはシティやメリルリンチ、AIGも含まれていることが分かった。今度また税金で救済してもらう必要が生じたときに備え、有力な弁護士など友人はいくらいても多過ぎない。

 ■ステップ8 次の社内パーティーにはローリング・ストーンズを呼ぼう。資産運用とカストディー業務のノーザン・トラストは2月に主催したゴルフトーナメントでシェリル・クロウとシカゴ、アース・ウィンド・アンド・ファイアーを呼んで顧客を楽しませ、注目を浴びた。どうせなら大いに目立つことをして、もうガイトナー長官の指図は受けないことを大々的に知らしめるのがいい。

 ■ステップ9 スタンレー・オニール元メリルCEOを取締役会の報酬委員会の委員長に雇う。退職金1億6150万ドルを承認してもらうためには、その金額の退職金の必要性を理解してくれる人間が委員長なのが好都合だろう。

 ■ステップ10 ガイトナー長官を助けるために長官の住宅を買い取ってあげる。財務長官にも救済が必要だ。恩返しをしてもらうチャンスが訪れないともかぎらない。同長官は160万ドルで売りに出したこの家が売れなくて月7500ドルで貸している。

 そして最後のアドバイス。決して決して、メジャーリーグのスタジアムの命名権を買ったり、イングランドのサッカーチームのユニフォームスポンサーになったりしてはいけない。ウォール街にすら許されない罪というものはあるのだ。(コラムニスト Jonathan Weil)
<引用終わり