「検察vs小沢」の戦い 5 - 西松建設の調査報告書2009/05/17

15日付けで政治献金問題を含めた西松建設の調査報告書が同社のサイトに公開されている。外部諮問委員会も交えて、今年1月28日付けで設置された「新生西松創造委員会」により約4.5ヶ月に渡って行われた調査の報告書である。多くの方が指摘されているように、主要報道機関による印象操作としか思えない報道に比べてはるかに信頼できる資料と思える(政治献金問題の記述は21~27ページ)。

http://www.nishimatsu.co.jp/press/2009/20090515_2.pdf

俺が不思議に思っていたのは、なんで西松建設は、職務権限もないし、実際に斡旋利得とかで立件されることもなかった小沢さんに、報道されているような金額を献金していたのかということだ。とはいえ、報道されている多額の金額と異なり、大久保秘書と関わると思われる違法献金で元社長国澤さん問われている金額は、増額されてもわずか500万円(増額前は100万円)である。

「後者の他人名義での献金禁止は、客体が政党または政治資金団体であっても成立する犯罪であることから、同月24 日に國澤が公判請求された時点では、違法献金の額は100万円とされていたが、その後、他人名義での献金が重ねられたことによって、この額は合計500 万円に増額されている。」(報告書21ページ)

献金の目的は何だったのか?実際には小沢さんには何の権限もないことは現場の人間は解っていたのではないか?社員の面白い供述が記載されている。

「献金を行う趣旨に関しては、工事の発注を得たいという積極的な動機よりも、受注活動を妨害しないでほしいという消極的な理由もあったと供述する者もいた。」(同22ページ)

社員に献金させる方法は報道されているとおり、「特別賞与の名目で金銭を交付し、その代わりに当該社員から年に2 回、政治団体への寄附をさせていた。」しかし、ここで見落としてならないのは、実体は政治団体への寄付を目的とした特別賞与であっても、その寄付が完全強制ではないと判断される記述があることだ。

「会員とする社員は、当時の幹部社員が全国の支店を回って、一人一人勧誘し、会員となる旨の了解を得ていった。」(同22ページ)

また、特別賞与の恩恵がなく、「自腹を切る」ことで寄付していた取締役もいた。会社上層部からの要請がどの程度の強制力を心理的に与えるかは、会社や個人によって異なるだろう。しかしながら、

「特別賞与加算金の交付を受けた社員は、必ずどちらかの政治団体の会員になっており、政治団体から指定された会費を支払っていた。」(同25ページ)

となると、実体はほぼ強制と結論づけられると思われる。もし政治団体を指定せずに西松が政治への参加、寄付を呼び掛けていたなら、問題はないと思うが、政治団体も会費も指定され、その通りにやっていたとなると話は別だ。報告書も唱えているように、

「もとより、政治献金を行う自由、権利があることも真理であって、ただその方法を間違ったとの評価もあるかもしれないが、本件は、巧妙に仕組まれた犯行であって、非は全面的に当社にある。」(同26ページ)

小沢さんの秘書の大久保さん関係では、西松建設の2つの政治団体に大久保さんが働きかけていたなどという記述はなく、国澤さんとともに、他人名義での献金禁止で東京地検特捜部によって公判請求されることになったと触れているだけだ。

興味深いのは、政治資金改正法に伴って西松が最初の政治団体、「新政治問題研究会」を設立したのが、平成7(西暦1995年)年11月という部分だろうか。その頃大久保さんは何をしていたかというと、釜石市議であり、2期目の途中の1999年に自民党、自由党の推薦で釜石市長選に立候補し、落選している。小沢さんの私設秘書になったのは2000年(39歳?)。つまり、時系列ではこうなる。

91年 :大久保さん、釜石市議(~99年まで)
95年11月:西松建設、新政治問題研究会設立
99年06月:西松建設、未来政治研究会設立
99年 :大久保さん、釜石市長選に立候補、落選
00年 :大久保さん、小沢さんの私設秘書になる

大久保さんの経歴については、何か訳の分からない報道がある。例えば「00年から会計責任者」などと報道されているんだけど、私設秘書になったばかりの人に陸山会の会計責任者なんてやらせるんだろうか?それも市議の経験しかない40歳前の、国政の世界では右も左もわからないであろうひよっこといっていい人に。小沢さんぐらいのレベルになったら、私設秘書にしてから、その後何年かしてから公設秘書、会計責任者という運びになるんじゃないだろうか。そうでもなければ、大久保さんはよほどの「大物」ということになる。「大物」だから、報道に見られるように、西松建設の政治団体の代表にあったらこったら指示できたってことなんだろうか?

赤旗から見た西松建設の報告書2009/05/17

品行方正、清廉潔白の党、共産党の機関誌「赤旗」も西松建設の報告書に関する記事を出していた。

献金先・額 西松が決定 内部調査を公表
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-05-16/2009051601_03_1.html

俺には、共産党というのは、自分の思考の枠組みがあって、それを現実に当てはめようとする。当てはまらない場合は、当てはまらない方が悪いというきわめて教条主義的な考えに思える。だから、西松建設の報告に

「献金を行う趣旨に関しては、工事の発注を得たいという積極的な動機よりも、受注活動を妨害しないでほしいという消極的な理由もあったと供述する者もいた。」(同22ページ)

と紹介されていても、

「当然、その前提となるのは、提供先の政治家に同社の献金であることを伝えることです。そうでなければリスクを冒してまで違法献金をする意味がありません。」

と自分で勝手に前提を立て、

「国民は、小沢氏や二階氏の説明にまったく納得していません。」

となる。こう考えるんだったら、国民あったらこったら以前に、国澤さんをはじめとして、西松の献金に関わった人たちがいるのだから、自分たちが「前提」としていることを西松側がやったのかどうか、つまり、「同社の献金であることを伝え」たのかどうか確認すればいいだけのことではないのか。それが確認できたら、赤旗の大スクープだろう。そして、伝えられたことが事実かどうか、政治家を問い質せばいいだろう。現実問題として、例えば小沢さんの側がそのことを伝えられていたなら、政党への献金にするように依頼していたかもしれないのだ。なぜ自分の立てた前提で国民を楯に疑惑といい、他人に説明を求めるのかまるで理解できない。

報告書にあるように「企業である以上政治献金を行うのは当然であるとの意識から」やったのかもしれないし、それ以上に昨年までのわずか5年の間に26億、年平均5億を超える額が「特別支出金」として計上されている以上、政治家への献金はその特別支出金の本当の目的、もっともやばい使途を誤魔化すためという見方もできる。そもそも国澤さんの方は、最初に設立した新政治問題研究会の代表者から、4年以上も経ってから「政治団体としての規模が大きすぎると目立つので、政治団体をもう一つ設立して資金を分散し、目立たないようにしたいと申し出」を受けてから2つ目の団体の設立を承認したぐらいだから、リスクを冒すという自覚があったかどうかも怪しい。おまけに、その政治団体の代表者は国澤さんから命ぜられるがままに活動していたのだ。

いずれにしても、西松建設は5年間で26億もの使途不明金の行方を追うべきじゃないだろうか。また、国澤さんを背任罪とかで訴えるべきじゃなかろうか。こんな金額が「個々の支出に関して、その必要性の判断、金額の判断及び継続させるか否かの判断などが、ほぼ社長の独断で決せられており、他の役員及び社員らは、その支出決定さえ知らされていないという実態が明白に存在している。」なんて信じられないことだ。

「検察vs小沢」の戦い 6 - 東京地検の嘘を暴く2009/05/17

政治資金規正法での大久保秘書の「虚偽記載」が成立するためには相手が必要である。つまり、虚偽の記載をすることになった献金を行った相手である。皆さんご承知のように、その相手とは「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」という2つの政治団体から献金を行った西松建設である。報道によれば、東京地検は、予定されている衆議院選挙と関係ないとして、大久保さんの逮捕を次のように説明していた。

「検察が最も意識したのは時効の問題だった。政治資金規正法の虚偽記入罪の時効は5年で、逮捕容疑になった2100万円のうち、03年の700万円分は今月末に時効を迎える。」

ソース:読売新聞09年3月5日付け「「違法献金システム化」で悪質、時効も意識し立件…東京地検」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090305-OYT1T00049.htm

しかし、先に取り上げた西松建設の調査報告書に、これに関連した記述がある。

「後者の他人名義での献金禁止は、客体が政党または政治資金団体であっても成立する犯罪であることから、同月24 日に國澤が公判請求された時点では、違法献金の額は100万円とされていたが、その後、他人名義での献金が重ねられたことによって、この額は合計500万円に増額されている。」(報告書21ページ)
http://www.nishimatsu.co.jp/press/2009/20090515_2.pdf

國澤さんが公判請求された時点の同月24日、つまり、大久保さんの拘留期限が切れる3月24日にいきなり増額されて出てきた、この国澤さんの違法献金額「500万円」は、どこから出てきた数字だろうか?この「500万円」は2つの政治団体が2006年の最後に小沢さん関係の団体に献金した、これのことではないだろうか。

ソース:四国新聞09年3月10日付け「西松、解散直前“駆け込み献金”/小沢代表側に500万円」
http://www.shikoku-np.co.jp/national/main/article.aspx?id=20090310000434

他にピッタリ該当する金額がない。となると、上記読売の記事に紹介されている東京地検の佐久間達哉部長が語った思われる時効の話は嘘ということになる。政治資金規正法の時効は5年であり、2006年に献金されているわけだから、時効は2011年、2年後である。東京地検特捜部は、この2年の間に大久保さんを「虚偽記載」で立件できたわけだ。予定されている衆議院選挙を終えても十分な余裕をもって。もちろん、東京地検が毎年の献金をこれは違法、これは適法と区別しているなら話は別である。その場合は、国澤さんの違法献金額がどうして「500万円」になったのか、ぜひ東京地検に明らかにしてもらいたい。