注目すべき英フィナンシャル・タイムズ紙の社説(更新) ― 2010/01/21
「小沢一郎の破壊(Ozawa Destruction)」と題する英フィナンシャル・タイムズ紙の社説が注目を集めている。JPressで全文が翻訳されているので、先ずは全文を掲載させていただこう。是非、お読みいただきたい。
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社説:小沢一郎の破壊
(2010年1月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
小沢一郎氏は何の理由もなく「壊し屋」と呼ばれているわけではない。先の総選挙で、過去20年近く企んできた自民党の破壊を成し遂げた男は、自党である民主党にも全く同じことをやってしまう可能性が十分ある。
昨年8月の衆院選で民主党を勝利に導き、現在幹事長を務める「選挙の神様」は、今や党の足かせとなった。民主党の支持率はほんの数カ月で70%から45%まで急落した。支持率低下の大きな理由は、小沢氏を取り巻くスキャンダルの臭いと、この67歳の政界の老兵が密かに舞台裏から民主党を運営しているという国民の認識である。
党の足かせとなった「選挙の神様」
民主党が政権を取る前に小沢氏の政治献金問題の捜査に乗り出した検察は既に、同氏の現役・元秘書を3人逮捕している。メディアを利用して小沢氏にマイナスとなる話をリークする検察のやり方は恥ずべき行為であり、日本では今なお、真の権力は選挙で選ばれていない官僚の手中にあるという民主党の主張を裏づけるものだ。
だが、それを言えば同じように、小沢氏は常に、民主党が断ち切りたいと考えているはずの旧来型の金権政治に関与してきた。
小沢氏の周辺に漂う悪臭は、自らをクリーンで、政策に基づく政府として打ち出した党に害を与えている。小沢氏が潔白を証明するか、さもなくば舞台を去らねばならないのは、このためだ。
もし小沢氏が辞任すれば――それ以上に望ましいのは、決断力を欠く鳩山由紀夫首相が彼を解任することだ――、民主党は延命を図れるかもしれない。民主党には間違いなくそれが必要だ。何しろ同党は、鳩山氏自身を取り巻くもう1つの政治献金スキャンダルをはじめ、多くの問題を抱えているからだ。
民主党はお粗末なスタートを切った。外交政策では優柔不断な態度を見せ、ワシントンの同盟相手を苛立たせた――公正を期すために言うならば、米国政府の方が、東京の新政権に適応するうえで不手際が目立っているが。
民主党で歴史が繰り返されてはならない
しかし、民主党は国内でも躓いた。財政政策を巡って混乱に陥り、藤井裕久氏の財務相辞任を早める羽目になった。民主党はまた、金融規制などの政策領域をハイジャックした小党の連立パートナーにおもねっている。
自民党が最後に――たった1度だけ――政権を失ったのは1993年だった。当時、ほかならぬ小沢氏の策略が、政権発足からわずか9カ月後に連立与党の早すぎる消滅を確実なものにした。昨年の民主党の勝利は、日本にとって良いことだった。今再び、歴史が繰り返すようなことがあってはならない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2598
19日付け原文はこちら:http://www.ft.com/cms/s/0/c6973c94-0531-11df-a85e-00144feabdc0.html
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さすがジェームズ・ボンドの国から生まれた、いまや「世界の・・」となっているフィナンシャル・タイムズ紙の社説である。これまでに読んだ「疑惑」に基づく小沢氏退陣論の中で最も良く書けている。しかし、民主主義のお手本、イギリスの国際紙が「メディアを利用して小沢氏にマイナスとなる話をリークする」、それも嘘を交えた検察からのリークによるマスコミ総掛かりの疑惑に基づいて“単なる政策ではなく、他国の政治家の進退”に口を挟み、“must"を使って「小沢氏が潔白を証明するか、さもなくば舞台を去らねばならない」と書くのは、いかにも唐突、傲慢、無礼の感を否めない。どことなく、同じイギリスの「世界のBBC」を思い出させる。中立公正を装いながら、ちょっとしたところを細工して世論を誘導する。
最後の「昨年の民主党の勝利は、日本にとって良いことだった。今再び、歴史が繰り返すようなことがあってはならない」という終わり方も秀逸である。しかし、残念ながら、主張と異なり、指摘されているような枠組みでの歴史は繰り返さない。もし検察が勝てば、表向きだけであったとしても日本における政党政治が完全に死に、検察・官僚政治があからさまに表舞台に登場するだけである。なぜなら、検察による裁量により、政治資金規正法の不記載あるいは虚偽記載などという形式犯で、証拠隠滅の恐れもない国会議員が逮捕されてしまうのだから。
いずれにしても、政権党とはいえ、一政党の幹事長である小沢氏の進退が、フィナンシャル・タイムズの社説にまで取り上げられるということは、単に日本の国内問題ではなく、英米をも絡んだ重大問題であるということだろう。これまでの報道や郷原さんの論考を読む限り、事実に基づいて検察が小沢さんを攻撃する手は失われたと思われる。残りは、このフィナンシャル・タイムズのような周辺論になっていくのだろうか。個人的には、小沢氏の進退が世界的にも大きな影響を持つのであるから、どの国の誰がどのようなことを主張しているのか、注目したい。
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社説:小沢一郎の破壊
(2010年1月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
小沢一郎氏は何の理由もなく「壊し屋」と呼ばれているわけではない。先の総選挙で、過去20年近く企んできた自民党の破壊を成し遂げた男は、自党である民主党にも全く同じことをやってしまう可能性が十分ある。
昨年8月の衆院選で民主党を勝利に導き、現在幹事長を務める「選挙の神様」は、今や党の足かせとなった。民主党の支持率はほんの数カ月で70%から45%まで急落した。支持率低下の大きな理由は、小沢氏を取り巻くスキャンダルの臭いと、この67歳の政界の老兵が密かに舞台裏から民主党を運営しているという国民の認識である。
党の足かせとなった「選挙の神様」
民主党が政権を取る前に小沢氏の政治献金問題の捜査に乗り出した検察は既に、同氏の現役・元秘書を3人逮捕している。メディアを利用して小沢氏にマイナスとなる話をリークする検察のやり方は恥ずべき行為であり、日本では今なお、真の権力は選挙で選ばれていない官僚の手中にあるという民主党の主張を裏づけるものだ。
だが、それを言えば同じように、小沢氏は常に、民主党が断ち切りたいと考えているはずの旧来型の金権政治に関与してきた。
小沢氏の周辺に漂う悪臭は、自らをクリーンで、政策に基づく政府として打ち出した党に害を与えている。小沢氏が潔白を証明するか、さもなくば舞台を去らねばならないのは、このためだ。
もし小沢氏が辞任すれば――それ以上に望ましいのは、決断力を欠く鳩山由紀夫首相が彼を解任することだ――、民主党は延命を図れるかもしれない。民主党には間違いなくそれが必要だ。何しろ同党は、鳩山氏自身を取り巻くもう1つの政治献金スキャンダルをはじめ、多くの問題を抱えているからだ。
民主党はお粗末なスタートを切った。外交政策では優柔不断な態度を見せ、ワシントンの同盟相手を苛立たせた――公正を期すために言うならば、米国政府の方が、東京の新政権に適応するうえで不手際が目立っているが。
民主党で歴史が繰り返されてはならない
しかし、民主党は国内でも躓いた。財政政策を巡って混乱に陥り、藤井裕久氏の財務相辞任を早める羽目になった。民主党はまた、金融規制などの政策領域をハイジャックした小党の連立パートナーにおもねっている。
自民党が最後に――たった1度だけ――政権を失ったのは1993年だった。当時、ほかならぬ小沢氏の策略が、政権発足からわずか9カ月後に連立与党の早すぎる消滅を確実なものにした。昨年の民主党の勝利は、日本にとって良いことだった。今再び、歴史が繰り返すようなことがあってはならない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2598
19日付け原文はこちら:http://www.ft.com/cms/s/0/c6973c94-0531-11df-a85e-00144feabdc0.html
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さすがジェームズ・ボンドの国から生まれた、いまや「世界の・・」となっているフィナンシャル・タイムズ紙の社説である。これまでに読んだ「疑惑」に基づく小沢氏退陣論の中で最も良く書けている。しかし、民主主義のお手本、イギリスの国際紙が「メディアを利用して小沢氏にマイナスとなる話をリークする」、それも嘘を交えた検察からのリークによるマスコミ総掛かりの疑惑に基づいて“単なる政策ではなく、他国の政治家の進退”に口を挟み、“must"を使って「小沢氏が潔白を証明するか、さもなくば舞台を去らねばならない」と書くのは、いかにも唐突、傲慢、無礼の感を否めない。どことなく、同じイギリスの「世界のBBC」を思い出させる。中立公正を装いながら、ちょっとしたところを細工して世論を誘導する。
最後の「昨年の民主党の勝利は、日本にとって良いことだった。今再び、歴史が繰り返すようなことがあってはならない」という終わり方も秀逸である。しかし、残念ながら、主張と異なり、指摘されているような枠組みでの歴史は繰り返さない。もし検察が勝てば、表向きだけであったとしても日本における政党政治が完全に死に、検察・官僚政治があからさまに表舞台に登場するだけである。なぜなら、検察による裁量により、政治資金規正法の不記載あるいは虚偽記載などという形式犯で、証拠隠滅の恐れもない国会議員が逮捕されてしまうのだから。
いずれにしても、政権党とはいえ、一政党の幹事長である小沢氏の進退が、フィナンシャル・タイムズの社説にまで取り上げられるということは、単に日本の国内問題ではなく、英米をも絡んだ重大問題であるということだろう。これまでの報道や郷原さんの論考を読む限り、事実に基づいて検察が小沢さんを攻撃する手は失われたと思われる。残りは、このフィナンシャル・タイムズのような周辺論になっていくのだろうか。個人的には、小沢氏の進退が世界的にも大きな影響を持つのであるから、どの国の誰がどのようなことを主張しているのか、注目したい。
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