黒人大統領誕生に潜む心的背景 ― 2009/09/23
読者の方々は、アフガンやイラクで任務についている米兵が、その任務についてどのようなことを語っていたか、あるいは語っているかご存じだろうか。短く彼らの語っていることをまとめれば、「自分たちはアフガン(またはイラク)の人たちのために仕事をしている」だ。当初、これをニュースで耳にしたり、記事を読んだりしたとき、俺はただ命ぜられるがままに言っているだけだろうと思った。それが冗談だろうと思い、最後は本当にそう信じていると思うようになった。
少なくともイラクでは死者数は数十万、多くて100万を超え、スンニ派の人たちを筆頭に国内外避難者数は500万を超える。街は孤児と寡婦で溢れ、シリアなどでは家族の生計を維持するために少女たちが夜の生活に出かける。しかし、米兵は「イラクの人たちのために仕事をしている」と言う。シュールそのものだ。しかし、彼らの頭の中にあることは、そういうこと。「イラクの人たちのために仕事をしている」なのだ。
俺がイラク米兵の意見の中に見た異様さを、ずっと前に別の角度からアプローチしてたどり着いていた方がいる。藤永茂さん。俺は知らなかったのだが著名な方らしい。「オバマ現象/アメリカの悲劇」の中で藤波さんは次のように記している。全体はかなり長い論考だがぜひお勧めしたい。
転載開始>----------------------------
「オバマ現象」とは何か。政治的社会的現象としては、マスコミが騒いでいる御覧の通りの現象です。断然有利と伝えられていた白人女性候補ヒラリー・クリントンを、白人人口98%のアイオワ州やウィスコンシン州でも楽々と打ち負かして破竹の進撃を続ける黒人バラク・オバマ、テレビの映像を見ると、颯爽とマイクを握る彼のうしろにびっしりと並ぶ若い顔、中年男女、お年寄り、殆どすべては白い顔、これが「オバマ現象」です。このハンサムな黒白混血46歳の政治家のキャッチフレーズは、変化(Change)、夢(Dream)、希望(Hope)、そして、「きっとやれる(Yes, we can!)」です。この頃では、前から結構辛口の政治評論家と私が思っていた英国人までが「オバマなら、ブッシュがすっかり台無しにしてしまったアメリカを変えられるかもしれない。アメリカ人の多くがそれを望んでいるのだ」と発言するまでになっています。しかし、「オバマ現象」を前にしての私の想いは全く違います。今日のブログのタイトルを「オバマ現象/アメリカの悲劇」とした所以です。「オバマ現象」はアメリカの悲劇と呼ぶにふさわしい現象です。私にはこれを「アメリカの喜劇」あるいは「アメリカの笑劇(farce)」と呼びたい気持もありますが、それは不謹慎というもの。世界最強の国家アメリカ合衆国政府の不遜な一挙一動で、国外の何十万、何百万の人間に言い知れぬ苦難が襲いかかることになるのは、いま現在、我々がこの目で見ている事なのですから。また、私は、もしバラク・オバマがアメリカの大統領になったら、アメリカの国外、国内の政策がどのように変化(CHANGE!)するかについての予言をしようというのでもありません。今、われわれの眼前で展開している「オバマ現象」は何故起ったのか、何がその本質なのか、に就いてしっかりと考えてみたいのです。「オバマ現象」は、ごく荒っぽく捉えれば、白人アメリカの「集団ナルシシズム」と表現できるかもしれません。しかし、この表し方には、致命的な誤りがあります。神話のナルシスは水面に映る自らの美しい容姿に恋いこがれて死に至りますが、白人アメリカが本当の自分の美しい姿を映していると信じ込んでいる鏡は、実は、悪魔がかざす魔の鏡であり、そこに映っているのはアメリカの本当の姿ではありません。喩えが安っぽくなり過ぎましたが、「オバマ現象」がアメリカを死に至らしめる病となる可能性は、やはり、否めません。「オバマ現象」は白人アメリカがバラク・オバマを待ちに待ったメシアとして熱狂的に迎えている現象ではなく、黒人の男をアメリカ合衆国大統領として擁立しようと熱心に努力する自分たちの姿こそ、アメリカ白人の心の正しさ、寛容さ、美しさを映すものであるとする自己陶酔、自己欺瞞こそが「オバマ現象」の真髄である−−これが私の言いたい所なのです。私の根本的な見方なのです。私には、この立場に固執し、この考えを読者に理解して頂きたいという強い思いがありますが、そう簡単に理解して下さるとは思えませんので、ゆっくりと説明することに致します。
オバマ現象/アメリカの悲劇(1)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/02/post_01be.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/post_488d.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(3)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/3_5a82.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(4)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/post_b230.html
-------------------------<転載終わり
少なくともイラクでは死者数は数十万、多くて100万を超え、スンニ派の人たちを筆頭に国内外避難者数は500万を超える。街は孤児と寡婦で溢れ、シリアなどでは家族の生計を維持するために少女たちが夜の生活に出かける。しかし、米兵は「イラクの人たちのために仕事をしている」と言う。シュールそのものだ。しかし、彼らの頭の中にあることは、そういうこと。「イラクの人たちのために仕事をしている」なのだ。
俺がイラク米兵の意見の中に見た異様さを、ずっと前に別の角度からアプローチしてたどり着いていた方がいる。藤永茂さん。俺は知らなかったのだが著名な方らしい。「オバマ現象/アメリカの悲劇」の中で藤波さんは次のように記している。全体はかなり長い論考だがぜひお勧めしたい。
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「オバマ現象」とは何か。政治的社会的現象としては、マスコミが騒いでいる御覧の通りの現象です。断然有利と伝えられていた白人女性候補ヒラリー・クリントンを、白人人口98%のアイオワ州やウィスコンシン州でも楽々と打ち負かして破竹の進撃を続ける黒人バラク・オバマ、テレビの映像を見ると、颯爽とマイクを握る彼のうしろにびっしりと並ぶ若い顔、中年男女、お年寄り、殆どすべては白い顔、これが「オバマ現象」です。このハンサムな黒白混血46歳の政治家のキャッチフレーズは、変化(Change)、夢(Dream)、希望(Hope)、そして、「きっとやれる(Yes, we can!)」です。この頃では、前から結構辛口の政治評論家と私が思っていた英国人までが「オバマなら、ブッシュがすっかり台無しにしてしまったアメリカを変えられるかもしれない。アメリカ人の多くがそれを望んでいるのだ」と発言するまでになっています。しかし、「オバマ現象」を前にしての私の想いは全く違います。今日のブログのタイトルを「オバマ現象/アメリカの悲劇」とした所以です。「オバマ現象」はアメリカの悲劇と呼ぶにふさわしい現象です。私にはこれを「アメリカの喜劇」あるいは「アメリカの笑劇(farce)」と呼びたい気持もありますが、それは不謹慎というもの。世界最強の国家アメリカ合衆国政府の不遜な一挙一動で、国外の何十万、何百万の人間に言い知れぬ苦難が襲いかかることになるのは、いま現在、我々がこの目で見ている事なのですから。また、私は、もしバラク・オバマがアメリカの大統領になったら、アメリカの国外、国内の政策がどのように変化(CHANGE!)するかについての予言をしようというのでもありません。今、われわれの眼前で展開している「オバマ現象」は何故起ったのか、何がその本質なのか、に就いてしっかりと考えてみたいのです。「オバマ現象」は、ごく荒っぽく捉えれば、白人アメリカの「集団ナルシシズム」と表現できるかもしれません。しかし、この表し方には、致命的な誤りがあります。神話のナルシスは水面に映る自らの美しい容姿に恋いこがれて死に至りますが、白人アメリカが本当の自分の美しい姿を映していると信じ込んでいる鏡は、実は、悪魔がかざす魔の鏡であり、そこに映っているのはアメリカの本当の姿ではありません。喩えが安っぽくなり過ぎましたが、「オバマ現象」がアメリカを死に至らしめる病となる可能性は、やはり、否めません。「オバマ現象」は白人アメリカがバラク・オバマを待ちに待ったメシアとして熱狂的に迎えている現象ではなく、黒人の男をアメリカ合衆国大統領として擁立しようと熱心に努力する自分たちの姿こそ、アメリカ白人の心の正しさ、寛容さ、美しさを映すものであるとする自己陶酔、自己欺瞞こそが「オバマ現象」の真髄である−−これが私の言いたい所なのです。私の根本的な見方なのです。私には、この立場に固執し、この考えを読者に理解して頂きたいという強い思いがありますが、そう簡単に理解して下さるとは思えませんので、ゆっくりと説明することに致します。
オバマ現象/アメリカの悲劇(1)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/02/post_01be.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/post_488d.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(3)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/3_5a82.html
オバマ現象/アメリカの悲劇(4)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2008/03/post_b230.html
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African American - 米国における監獄ビジネス ― 2009/09/23
オバマ大統領は黒人顔とはいえ、奴隷として連れてこられたAfrican Americanの子孫ではない。アメリカでは同じ黒人でも、これがかなり決定的な意味を持つように見える。シカゴで進んでいる公立学校のチャーター化で、首になっている教師の多くはAfrican Americanとのことだった。ハリケーン・カトリナのときもそうだったが、African Americanが狙い撃ちされている様子が伺える。
民営化がますます進む刑務所も、お客さんはAfrican Americanが突出しているようだ。
引用開始>------------------------
少し調べてみると、世界で最も豊かで自由な國の筈のアメリカ合衆国の監獄システムが、信じられないような物凄い状況にあることが分かります。2006年12月の法務省発表のデータによると、執行猶予、保釈を含めた服役者は7百万、2百2十万が監獄の中にいます。これは人口当りだけではなく、絶対数でも世界第一位、如何なる「失敗国家」よりも高い数であり、世界中で投獄されている服役者の4人に1人はアメリカ国内のアメリカ人、10万人あたりの監獄服役者で見ると、少し古い2003年の統計ですが、アメリカの702人に対して、我が日本は53人です。1970年から2005年までの増加率は700%、その後もますます増え、毎週約千人が新しく投獄されているそうです。アメリカの黒人人口は全人口の12%あまり、しかし、監獄人口の50%は黒人が占めています。何故こんなことになっているのか? ジーナ事件はその一つのヒントを与えます。黒人たちはいい加減な法的プロセスで簡単に監獄にぶちこまれてしまうのです。前回にも書きましたが、ジーナ高校で黒人生徒が騒いだとき、検事Reed Walters が学校に乗り込んで来て「See this pen? I can end your lives by the stroke of a pen」と豪語しました。
.....
.....
毎週千人も刑務所入りの人の数が増えれば、当然それに見合う刑務所の数も増えなければなりません。一つの報告書によれば、1990年代だけでも245の刑務所が、大都市周辺ではなく、地方に分散して建設されました。これは財政的窮乏に喘ぐ地方自治体にとっては大福音。受刑者千人あたり300人のローカルな雇用が増え、税収入も大幅増加、道路舗装や地下水道整備などのインフラの充実も期待できます。監獄産業大歓迎というわけです。地方の活性化に役立って、大都市の治安の改良ももたらすとなれば、これこそ一石二鳥です。お金の勘定が金科玉条のアメリカの論理の当然の成り行きですが、アメリカの刑務施設もプライベタイゼーションが花盛り、十年前は民営の刑務所は5個所、収容人数2千であったものが、今では百以上、ベッド数6万2千、今から10年の間にベッド数は36万に達すると見込まれています。その最大手は Corrections Corporation of America (アメリカ刑務施設株式会社)で約50の刑務所を運営し、このところ毎年1万ベッド数増加のペースを誇っています。したがって、この会社CCA の株は大人気で1992年に一株$8が今では$30の値をつけています。民営刑務所産業は目覚ましい成長産業として、アメリカン・エクスプレス社やゼネラル・エレクトリック社なども大々的に投資をしています。民営化の波に乗って、日本でも素晴らしい設備を誇る民営刑務所が出来たというニュースが流れていましたが、アメリカの民営刑務所の内情はどうでしょうか? 最高の利潤を絞り出すのが民営刑務所経営の鉄則ですから、受刑者も看守たちも極楽の生活を楽しんでいないことは聞いてみなくても分かります。実際、その内情のひどさを訴える声が日増しに高くなっているようです。
アメリカでの黒人差別(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2007/10/post_71ae.html
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民営化がますます進む刑務所も、お客さんはAfrican Americanが突出しているようだ。
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少し調べてみると、世界で最も豊かで自由な國の筈のアメリカ合衆国の監獄システムが、信じられないような物凄い状況にあることが分かります。2006年12月の法務省発表のデータによると、執行猶予、保釈を含めた服役者は7百万、2百2十万が監獄の中にいます。これは人口当りだけではなく、絶対数でも世界第一位、如何なる「失敗国家」よりも高い数であり、世界中で投獄されている服役者の4人に1人はアメリカ国内のアメリカ人、10万人あたりの監獄服役者で見ると、少し古い2003年の統計ですが、アメリカの702人に対して、我が日本は53人です。1970年から2005年までの増加率は700%、その後もますます増え、毎週約千人が新しく投獄されているそうです。アメリカの黒人人口は全人口の12%あまり、しかし、監獄人口の50%は黒人が占めています。何故こんなことになっているのか? ジーナ事件はその一つのヒントを与えます。黒人たちはいい加減な法的プロセスで簡単に監獄にぶちこまれてしまうのです。前回にも書きましたが、ジーナ高校で黒人生徒が騒いだとき、検事Reed Walters が学校に乗り込んで来て「See this pen? I can end your lives by the stroke of a pen」と豪語しました。
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毎週千人も刑務所入りの人の数が増えれば、当然それに見合う刑務所の数も増えなければなりません。一つの報告書によれば、1990年代だけでも245の刑務所が、大都市周辺ではなく、地方に分散して建設されました。これは財政的窮乏に喘ぐ地方自治体にとっては大福音。受刑者千人あたり300人のローカルな雇用が増え、税収入も大幅増加、道路舗装や地下水道整備などのインフラの充実も期待できます。監獄産業大歓迎というわけです。地方の活性化に役立って、大都市の治安の改良ももたらすとなれば、これこそ一石二鳥です。お金の勘定が金科玉条のアメリカの論理の当然の成り行きですが、アメリカの刑務施設もプライベタイゼーションが花盛り、十年前は民営の刑務所は5個所、収容人数2千であったものが、今では百以上、ベッド数6万2千、今から10年の間にベッド数は36万に達すると見込まれています。その最大手は Corrections Corporation of America (アメリカ刑務施設株式会社)で約50の刑務所を運営し、このところ毎年1万ベッド数増加のペースを誇っています。したがって、この会社CCA の株は大人気で1992年に一株$8が今では$30の値をつけています。民営刑務所産業は目覚ましい成長産業として、アメリカン・エクスプレス社やゼネラル・エレクトリック社なども大々的に投資をしています。民営化の波に乗って、日本でも素晴らしい設備を誇る民営刑務所が出来たというニュースが流れていましたが、アメリカの民営刑務所の内情はどうでしょうか? 最高の利潤を絞り出すのが民営刑務所経営の鉄則ですから、受刑者も看守たちも極楽の生活を楽しんでいないことは聞いてみなくても分かります。実際、その内情のひどさを訴える声が日増しに高くなっているようです。
アメリカでの黒人差別(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2007/10/post_71ae.html
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