AIG救済の裏側2009/07/04

リーマンは救済せずに、なぜAIGは救済したのか。AIG救済が決定されたときよく話題になったことだ。AIGは保険会社だからというもっともらしい説明があったが、ローリングストーン誌に寄稿しているBatt Taibbi氏によればまるで違う真相になる。AIGが保険会社という認識自体が誤っている。Democracy Now!でのインタビューで彼が語ったことをまとめると次のようになる。

・ AIGが保険会社でなくなった最大の動きは、Glass-Steagall Act法を没にした1999年のGramm-Leach-Bliley法による規制緩和。この法律のおかげで、CitiやBank of America、AIGなどの巨大企業が成立し、基本的には保険会社であったAIGが非常に複雑なヘッジファンド、投資銀行、その他さまざまなものを手がける巨大企業になった。
・ 新法の下では、AIG自体が金融監督機関(OTS)を選べるようになった。AIGが選んだ金融監督機関は監督機関として最小で、実際のところ、保険の専門家は一人しかいなかった。それがある種制御不能な状態になった理由である。
・ AIG上層部へのボーナスがニュースを賑わせたが、そもそもその頃はAIGの株式は80%国が保有しており、基本的にはやりたいこと、つまりボーナスを返還させることなどはすぐにできた。
・ ゴールドマンサックスなどの投資銀行は住宅市場に莫大な金額の投資をしていて、それが債務不履行になるのを恐れた。AIGは一種の保険としてクレジットデフォルトスワップ(CDS)という保険証券を発行し、ゴールドマンはCDS保険を掛けた。住宅ローンなどが債務不履行になった場合、ゴールドマンはAIGから保険金の支払いを受けることができる。
・ CDSには法的規制はない。これは、2000年のCommodity Futures Modernization Act(商品先物現代化法)に基づく。この法のおかげで、CDS商品はいっさいの法的規制を受けず、極端な話し、元手が1円もなくても、いくらでもCDS保険を販売できるようになった。
・ ゴールドマンがCDS保険でAIGから受けた保証額は約2兆円。つまり、AIGはゴールドマンに2兆円の借りがあったから、AIGを救済することはゴールドマンを救済することだった。
・ AIG救済を仕組んだのは誰か?前財務長官、ハンク・ポールソンで、ゴールドマンの元CEO。救済以後AIGのCEOに就任したのは誰か?これまたゴールドマンの元社員のエド・リディー。で、現財務長官ティモシー・ガイトナーの主任補佐官はマーク・パターソンは、これまたゴールドマンの元幹部。つまり、AIG救済を仕組んだ人たちはゴールドマンの卒業者で溢れている。
・ 全体として、AIG救済は国家が助成するヘッジファンドによるボロ儲け状況。つまり、政府がウォールストリートによって乗っ取られた状況である。

ソース:AIG and the Big Takeover: Matt Taibbi on “How Wall Street Insiders Are Using the Bailout to Stage a Revolution”(AIGと巨大乗っ取り:マット・タイビ「ウォーストリートのインサイダーはいかにして救済を利用して革命を成し遂げているか)
http://www.democracynow.org/2009/3/25/aig_and_the_big_takeover_matt
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これまで動きを追ってきたかぎり、タイビさんの分析は正しいと考えられる。何ともコメントのしようがない。一般に考える保険と違い、法的規制がなく、元手ゼロから始められるCDS保険という元々AIGが法的規制なしにやっていた保険販売に対して、政府が救済するという訳の分からない状況になった。AIGのやっていたことは詐欺だ。払えるカネもないのに、CDS保険を販売し、保険料をもらって、その間幹部は高給をもらっていた。そして、その詐欺は、米議会の圧倒的賛成で新しく成立した法律によって支えられていた。ゴールドマンは自己責任のはずなのだが、どういうわけか税金によって救済された。

最近の日本で言えば、少し前に詐欺事件として騒がれた円天を政府が救済すると言いだしたら、日本国民はどういう反応をするだろうか。

深く潜行する巨大大使館建設計画2009/07/04

バチカン並みの広さとして大きく取り上げられたイラクの米大使館。それと同じものがパキスタンのイスラマバードに計画されている。オバマ政権はそのための予算を要求している。大使館と言っても、イラクにあるのは頑強な壁によって外部世界と厳重隔離された要塞である。それと同じものがパキスタンに計画されている。アフガニスタンにも外部世界と厳重隔離された領事館が計画されている。これが何を意味するのか。すでに破産と言われるほどの赤字でありながら、テロリストとの戦いと称して戦費に税金を使い続けるオバマ政権。核兵器廃絶など、一般受けする発言は世界中に大々的に配信されるが、こうした報道は米国内でさえほとんど表に出てこない。

Iraq redux? Obama seeks funds for Pakistan super-embassy
(帰ってきたイラク?オバマはパキスタンでのスーパー大使館のための資金を要求する)
http://www.mcclatchydc.com/251/story/68952.html