*Big Brother is Watching You2009/07/05

郵政問題はまだ始まったばかりだが、1ヶ月前の鳩山総務相の辞任後、西川さんを続投させようと麻生さんに働きかけたとして未だに小泉元首相の名前が登場するのはなかなか興味深い。マスコミばかりでなく、少し前に紹介した須田慎一郎、高野孟両氏の対談でも、この二人は物知り顔にまだ小泉氏の影響力があることを臭わせる発言をしている。

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高野:それで、最後はどうなったのでしょう? 私が思うに、小泉純一郎元首相が「本当に西川のクビを切るのか!それなら俺は党を出るぞ」といったようなことを言ったのだと思いますが。
須田:最終的には小泉さんが動いたのですが、それ以外に奥田碩日本経団連名誉会長がブレず、「西川続投支持」ということで決着がついたと私は思っています。
・・・
須田:人事指名委員会が西川さんの続投を支持しなければ、水面下の動きでいくら小泉さんや竹中さんが「西川続投」と言ったところで、それは負け犬の遠吠えです。当初はこういった形の“美しい落としどころ ”が可能だったと思います。だけど、奥田さんは一時は官邸寄りだったのですが、最終的には西川続投を支持したようです。最後に小泉さんが神通力を発揮したと感じますね。
高野:最終的には小泉さんが「チルドレンを引き連れて自民党を割って出るぞ!」という覚悟でのぞんだんでしょうね。
須田慎一郎×高野孟:かんぽの宿騒動の真相を語る
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2009/06/post_305.html
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この二人が本当に言いたかったことは何だろうか。小泉チルドレンの力などすでにないことは分かっている。次の衆院選はほぼ全員落選だろうから、引き連れて自民党を割ろうが大したこととも思えない。小泉さんの方は、自ら応援に出たのに地元の横須賀の市長選でさえ勝てなかった。もはや小泉氏に神通力などないことなど、普段、自民党の議員と接しているであろう二人なら身にしみて分かっているはずなのだ。となると、須田、高野両氏は小泉という名前を出すことで何を言いたかったんだろうか?なぜ、日本郵政の問題の決着が付いたかのような発言をしているのだろうか?

また麻生首相は、小泉さんにすでに力などないことが分からないほど裸の王様、ボンクラだったのであろうか。いくら総理大臣の椅子に長くいたいと思っているとしても、鳩山さんの方の首を切れば、大多数の国民から総スカンを食うぐらい知っていたのではないのか。にもかかわらず、鳩山さんの方を辞任させた。もっと恐ろしい何かがあった?

となると、たどり着く結論は一つじゃないだろうか。マスコミなどから小泉氏の名前が出てくる理由。また、他人の口を介してとはいえ、小泉さん自身が自分の名前を出させる理由。向こう側にいるBig Brotherのことを示唆したかったのではないだろうか。

Big Brother is watching you.

というわけだ。これは脅しであり、この脅しが麻生さんばかりでなく、誰に向けられたものかを考えるのも、なかなか興味深い。

日本が陥ってきた思考の罠 - 日米安保2009/07/07

すでに遅いのかもしれない。しかし、実態は米軍に占領されているとはいえ、少なくとも建前は日本は民主主義の独立国である。ってことは、選挙を通じて何かを変えるチャンスがあるってことだ。現実問題として戦後半世紀を超える自民党政権を変えるチャンスが俺たちにはある。横須賀、静岡の地方選挙によって、考えられなかった交代、変化が起きているのだ。

まだ俺の頭の中ではオバマさんの言った「Can Change」ではなく、「May Change」だけど、とはいえ、それだけでも、いろんなことが見えてくるような気がする。これまで陥ってきた「思考の罠」から抜け出せそうな気がする。これは俺ばかりでなく、おそらく多くの日本国民もそう感じ始めているのではないだろうか。俺たちはどんな「思考の罠」に陥ってきたのだろうか、陥らされてきたのだろうか.....

何と言っても「思考の罠」の最大のものの一つには「日米安保」が挙げられるだろう。例えば、次は有料記事も配信している「国際戦略コラム」で匿名のF氏が書かれている「3335.衆議院選挙での勝敗は」という記事からの抜粋である。

「外交問題は米国との関係を大きく見直すことになり、不安な点である。日米安保を堅持すると言っているが、米国に民主党は反米的であると見られている。日米安保は日本だけではなく、米国からも拒否できることを見過ごしている。自民党に何でも反対したことが、外交問題を引き起こしたように見える。」
出典:http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/210705.htm

これが書かれた目的は明らかだろう。オブラートに包まれてはいるが、これまで繰り返されてきた「日米安保の見直し=不安」という図式の押しつけである。しかし、これまでの現実を見ると、このFという方の見方は根本的に誤っていることが理解できる。「米安保の見直し」は、ずっと前の自民党が政権のときから隷属の深化という形で起きている。例えば、駐留米軍に対する「思いやり予算」とやらは1978年の62億円から始まり、1990年には1000億円を超えて、最近は次のようになっている。

1990年 1680億円
1995年 2714億円
2000年 2567億円
2001年 2573億円
2002年 2500億円
2003年 2460億円
2004年 2441億円
2005年 2378億円
2006年 2326億円
2007年 2173億円
2008年 2083億円

元々負担していなかったものを負担する。これを「見直し」と言わずに何と呼べばいいのだろうか。さらにいわゆる憲法9条でも、解釈の変更という形で「見直し」は進められている。イラク派兵、ペルシャ湾沖での給油など金銭的には「思いやり予算」と同じく米軍経費を負担するという形で。また自衛隊の活動としては米軍指揮系統下の下請け軍、傭兵という形で。

このように「見直し」はすでに起きており、政権交代が起きるかもしれない状況になって、これを問題視するF氏の意見というのは、米国が望む見直しは許されるが、日本が望む見直しは許されないと言っているのに等しい。これを「同盟」関係と言えるだろうか。主人と奴隷の関係、「隷属」関係そのものだろう。相手が望む形でしか見直しをすることが許されないのだ。

日本が陥ってきた思考の罠 - 日米安保(補足)2009/07/07

一体全体、安保反対/賛成という二者択一の設問はいつからあるのだろうか。もう何年も前から安保はあまりにも日常に組み込まれてきていて、反対という意見さえなくなってしまったようだ。あるいはマスコミから消え失せてしまったようだ。

安保賛成と言ったって、別に日本国内に米軍基地がなければならないという理由はどこにもない。現実に、同盟関係にあるからと言って、一方の国の軍隊がもう一方の国に駐留していない関係なんていくらでもあるだろう。調べてはいないが、親米と言われる中東諸国にしても、むしろ、その方が一般的かもしれない。グアムに移転すると言っているのなら、日本国内の基地をみんななくして、全部グアムに移って貰う選択肢だってある。

いずれにしても、「見直し」は相手が望む内容であることも、望まない内容であることもある。しかし、それは独立国同士の契約関係として当たり前のことである。もし、これを認めないなら、同盟関係でもなんでもない。単なる主人と奴隷の関係だろう。

日本郵政問題 - 真打ち登場2009/07/07

2008年度年次改革要望書の米国側評価なるものが出てきたようですね。米国のマスコミも単に言われたことを流すだけでしょうから、米国側の認識が分かって面白いかもしれません。日本郵政の保険関係で「ある政府高官」なんてのも登場しちゃうし。

[ロイター発]
米政府、日本に米国産牛肉輸入と保険市場の規制緩和を促進するよう要請=年次改革要望書
2009年 07月 7日 10:26 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJS841554820090707

 [ワシントン 6日 ロイター] 米政府は6日、日米の規制・制度に関する年次改革要望書を発表し、米国産輸入牛肉および保険サービス市場の規制緩和を求めた。ただ、その他の分野における日本の市場開放措置に関しては一定の評価を示した。

 ロン・カーク米通商代表部(USTR)代表は声明で「米国産牛肉の輸入正常化および米保険業界に対する公平な参入機会の確保という2つの問題は、引き続き深刻な懸念である」として、日本政府に早期解決を求めた。

 日本は米国産牛肉の最大市場だったが、BSE(牛海綿状脳症)感染問題に伴い日本政府は2003年12月に米国産牛肉の輸入を禁止。その後06年7月に輸入を再開したが、BSEリスクが低いとされる生後20カ月以下の牛の肉に限って輸入を認めている。

 これに対し米政府は、国際的なガイドラインに準じて輸入牛肉に対する年齢制限を撤廃するよう日本政府に求めている。

 一方、世界で米国に次ぐ規模とされる日本の保険市場については、日本郵政グループが独占していると指摘。ある政府高官は記者団に対し、民間の保険会社に義務付けられているルールや規制に「日本郵政が十分に準拠していないことを示すかなりの証拠がある」と述べた。

 半面、製薬・医療機器に関する規制見直し加速に向けた新たな取り組みやインターネット上での著作権侵害に関する法的整備の強化、米園芸輸入品に対する新検査体制の確立など、その他の日本政府の規制緩和措置に関しては、一定の評価を示した。

 08年における日本の対米貿易黒字は727億ドルに上る。 

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細かい部分は機会があればということにして、最後の「08年における日本の対米貿易黒字は727億ドルに上る」がおかしいですね。米国の対中貿易を見ても分かるように、元々米国は自分たちで自国産業をアウトソーシングして、取引額では相手が黒字、儲けの方は一杯献金してくれる自国の方々の懐に入るようにやっているわけですから。

とはいえ、規制緩和を求める根拠というのが未だに貿易黒字なんてのも、あまりにも馬鹿らしくて、笑っちゃうというか。統計上、日本や中国が貿易黒字になるのは当たり前ですね。貿易黒字・貿易赤字なんて表の輸出・輸入額の比較にすぎないわけで。

日本郵政問題 - 真打ち登場(現地版)2009/07/08

同じロイター発の記事のワシントンポスト版があって、伝える内容が微妙に異なっていますね。もっと具体的に書いてあって、郵政関係で目に付くのはこれでしょうか。

Japan's insurance market is the second largest in the world after the United States, with an estimated $300 billion in net premiums paid each year.(日本の保険市場は米国に次ぐ第2位で年間の純保険料は30兆円と推定される。)

A U.S. trade official, speaking on condition he not be identified, told reporters Japan Post's "obligatory 10-year contract to sell insurance products through over 20,000 post offices in Japan" gives it a major advantage over other insurance companies.(米国通商当局者が匿名を条件に語ったところによれば、日本郵政は2万を超える郵便局を通じて10年満期の保険商品を販売しており、他の保険会社よりかなり優位な立場に立っている。)

出典:Washington Post - U.S. presses Japan on beef, insurance trade barriers(米国、牛肉と保険の貿易障壁で日本に圧力)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602091_pf.html
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「日本に圧力」って表現はまことに適切でいいですね。郵政関係では、米国系保険会社が日本の保険を獲得する上で郵便局自体が邪魔な存在ってことですね。確かに日本を解体する上で邪魔には違いありません。

ところで、日本でも米国でも、以前に年次改革要望書がこのような記事になったことがありましたっけ?